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やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

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やっぱすっきゃねん!VG-7

 ──最悪だ…。

 佳代はフェンスに背中を付けた。

 ──あれっ…?

 フェンスを越えると思った打球が伸びてこない。急激に落ちていく。今度は慌てて前に走りながらなんとか打球を掴んだ。

 そこは、予め下がっていた位置。──定位置から10メートル後方だった。
 佳代はセカンド和田に返球し、帽子を拾うと左中間フェンス向こうに立つポールの旗を見た。
 旗は垂れ下がっていた。

 ──風じゃないのか。

 ベンチに駆け戻り、自分の席に着いて汗を拭っていると直也が傍に来た。

「何やってんだ!あんなイージーフライを」
「いや…あんなに伸びないなんて…」

 危うく落としそうになったのを指摘され、佳代は困った顔で弁解する。

「当たり前だ!オレのストレートがフェンスを越えるわけねえだろ!」

 得意顔の直也。言い返せない佳代。そこに達也が現れた。

「何言ってやがる!打たれた瞬間、──やられた!─って顔して、マウンドにしゃがみ込んだくせに」
「あッ!おまえ黙ってろよ」

 直也は慌てて達也の口を塞ごうとするが、遅かった。

「何よッ!自分だって自分のボールに自信が無いんじゃない!」
「うるせえッ、バカ!」

 形勢逆転。佳代は立ち上がり、直也に詰め寄ると、

「バカとは何よ!自分も信じられないアンタの方がよっぽどバカじゃない」
「わ、分かったよ…」

 佳代の剣幕に直也はたじろいだ。

「人の事より自分の心配しなさいッ!」

 ダメ押しの声を背中に浴びて、直也は自分の席に戻っていった。

 2回は互いに3者凡退に終わり、3回表の青葉中の攻撃は8番加賀から。
 コップに注いだスポーツドリンクを喉に流し込み、ヘルメットを被ると手袋をきつく締めて佳代に近寄る。

「佳代。バットかしてくれるか?」

 突然のことに佳代は戸惑い気味に頷いた。

「いいけど…軽過ぎるかもよ」
「いいんだ…」

 ベンチから飛び出てネクストに向かう間、目は相手ピッチャーを捉えている。

 ──まずは先頭のオレがでないと…。

「バッター・ラップ!」

 主審が加賀を呼んだ。ゆっくりとネクストから右打席に入る。


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