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やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

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やっぱすっきゃねん!VG-12

「ひと回りして、奴らも必死になるからな。次から全力で行くぞ」
「分かった…」

 肩を並べてベンチに戻る2人。次回からの攻めをすり合わせた。

 ──加賀がやったんだ。オレだって。

 4回表、青葉中の攻撃。先頭の一ノ瀬は秘めたる思いを胸に打席に立つ。
 ピッチャーに2球で追い込まれた一ノ瀬だが、そこから4球粘って7球目をライト前に運んだ。

「田畑。今、何球目だ?」

 永井は相手ピッチャーの球数を訊ねた。田畑は慌ててスコアブックを見つめ──今ので55球です─と答える。
 永井は次の和田にバントのサインを送った。ランナー一ノ瀬も、いつもより大きくリードを取った。

 キャッチャーは──外せ─のサイン。ピッチャーは初球を外角高めに投げる。
 キャッチャーはボールを捕ると、ファーストに向けて素早く腕を振った。右足に体重が掛かっていた一ノ瀬の動きが遅れた。
 頭から1塁に飛び込む。が、わずかの差でファーストミットが右手をタッチした。

「アウトッ!」

 泥まみれでベンチに向かう一ノ瀬。頭を垂れたその表情は情けないほどだ。

「…すいません…」

 永井に謝る。が、永井は笑って一ノ瀬を迎える。

「気にするな。次でも出塁を頼むぞ!」

 一ノ瀬は顔を上げ、──ハイッ!─と元気な声を出した。

「分かったら泥まみれのユニフォームを何とかしろよ」

 選手を気遣いながら、永井にはイヤな感触が残った。
 結局、和田も森尾も出塁出来ずに4回表が終わった。

「ここからは全力だぞ…」

 投球練習を終えたマウンドで、達也は直也にそう伝える。──ここからは全力で投げて来いと。

「…分かってる」

 直也の表情が心無しか硬い。緊張感がそうさせた。

「プレイッ!」

 打順は1番から。直也はサイン通りに、渾身のストレートを投げ込んだ。
 次の瞬間、鋭い金属音が鳴った。叩き付けた打球は、ホームベースで弾かれ高く宙を舞った。

 ──早く落ちろ!

 達也は、落ちてきたボールを素手で掴み素早くファーストに送球する。


「うわッ!」

 ボールはファースト一ノ瀬の頭上を抜ける暴投になった。ライトのファウルゾーンを転がっていく。
 佳代は慌ててボールを処理したが、ランナーは2塁に達してしまった。


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