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盲愛コンプレックス
【青春 恋愛小説】

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盲愛コンプレックス-2

「茜」
「あ……」
戸惑う瞳が、俺を見上げた。
困ったように視線を泳がせ、しかしその時タイミングよく鳴った予鈴に、茜はほっとしたようだった。
俺はというと反対に暗く重いため息をつく。
「……後でな」
「う、うん……」
ぎこちない会話。
せっかく彼氏彼女になれたっていうのに。
どうしてこうなっちまうんだろう――俺は、茜とのこの距離に焦っていた。
俺は再び席に戻り、坂田に向かって肩を竦めた。
坂田は俺よりもずっと深刻そうな表情で、茜の方を見つめている。
「放課後、相談乗るよ」
そしていつもと同じように優しく笑みを浮かべながら、坂田は俺の肩を叩いた。
その言葉に俺は頷いて、首を垂れたまま席へと着いた。


原因は分かってるんだ。
俺がすべて悪いんだってことも。

それは、付き合って一週間が過ぎ、俺の家に茜を呼んだ日のことだった。
親の帰りが遅いことを知っていた俺は、実際期待していたんだ。
涼しくならない壊れかけのエアコンと、汗をかいた麦茶。
首筋の汗を拭う茜の肩をそっと抱き寄せ、俺達はキスをした。
柔らかな唇の感触と、リップクリームの甘い匂い。
俺はそのまま茜を押し倒して、細い肩と細い腰を抱き締めた。
首筋や頬に何度もキスをして、笑いながらじゃれ合い、やがて俺の愛撫に反応する茜の可愛い声をひたすら聞いていた。
途中までは気持ちよさげに身体を捩ったり甘い声を出していた茜。
それだってのに、途端にその顔が苦痛に歪んで。
『や……痛……ッ』
『わ、悪い……』
痛がる茜の気を紛らわせようと、胸や背中を刺激してやる。
『ダメ、痛……ッ!』
それでもやはり無理だった。
止める? という俺の問いに、茜はこくこくと頷いた。
その日は結局、それで終わりだった。
そしてあれから三日が経った俺達の間には、何とも言えない気まずい空気。
やっちまった、なんて後悔したって遅い。
分かってる、俺がすべて悪いって。
それでも、俺はどうにかしたいんだ。
相変わらず俺は茜に惚れているし、やっぱり抱きたいって思う。
でも、茜の奴がこのことで俺に幻滅して、もう付き合いたくないっていうならそれでいい。
俺はただ、この茜との気まずい関係を早くどうにかしたいだけなんだ。


「ちょっと早すぎた、のかな」
「だよなぁ……でも、でもでもすっげぇ可愛いんだもん」
学校の体育館裏、陽の当たる絶好の溜まり場で、俺と坂田はパックジュースと菓子パン片手に話していた。
頭を抱える俺の肩を軽く叩き、坂田は言う。
「まあ、仕方ないよ。好きだったらキスはしたいし、それ以上したいって思うのが普通だしさ」
ジャムパンを齧り、坂田は続けた。
「ただ、牧田さんこういうことには奥手そうだからね」
「だよなぁ」
俺は再び項垂れた。
本当に反省してるんだ。
茜の奴、初めてだから――って、俺もなんだけど――、絶対焦っちゃだめだって。大切にしなきゃって。
だけど、頭の中では分かっていても、本人を目の前にすると思わず気持ちが先走ってしまう。
その上、校内カップルの多くがエッチ済みなんてことを耳にしてしまうと。


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