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コンビニ草紙
【理想の恋愛 恋愛小説】

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コンビニ草紙 第五話-1

第五話;藤本書店、其の二。

「はぁ、何か緊張しますねぇ。綺麗なおねえさんと格好良いおにいさん
に囲まれて…」
そういうと藤本さんは頭をかいた。

「あはは、藤本さんっておもしろい方ですね。お若いのに何だか古風っていうか、
職業柄、仕方ないんでしょうか?」
「どうでしょう。じいちゃんとずっと暮らしてたので、ちょっと変わってるのかも
しれないす。自分ではあんまりわかんないすけど。」
「おじい様はもう引退なされたんですか。」
「ちょっと具合が悪くなってしまって今入院してるんす。両親が他界してるんで
私が継ぐ事にしたんすよ。今のところ『店長代理』ですけど。」
「じゃあ、おじい様の具合が良くなったら副店長ですね。」
「はぁ、副店長って言っても従業員は雇ってないんで、肩書きはあんま関係ないすけど。」
「そうですか。着物を着ているのはおじい様の影響ですか。」
「そうすね。着物が普段着なんで、洋服はほとんど着ないすね。」

基本的にサヤカが質問してそれに淡々と答えるというスタンスだ。
私は黙ってメモをとる。
大久保君は藤本さんを撮り終わると、店内を見てくると言って、一階に下りていった。

「...最後に、読者の方々にお店のアピールとか、メッセージが
ありましたらよろしくお願いします。」
「…そうすねぇ。今はパソコンとかメールで本とか読めると思うんすけど
やっぱりちゃんと紙の本を読んでほしいすね。本は大事にしてもらえれば
手元に形としてずっと残りますから」

へぇ。結構ちゃんとしてるんだ。
何となく若いし、ふらふらっとしてるけど、しっかりしてるんだなと
私は心の中で思った。

「ありがとうございました。藤本さんへの質問は以上なんですけど、お店の中
も一通り見たいので、あと少しお付き合いください。」
「へぇ、わかりました。」

階段を下りて、取り扱っている本やオススメの本などを聞いて店の中を周った。
するとレジのほうからジリリリリンッと大きな音がした。

「すんません。電話出てきても良いですか。」
「えっ、どうぞどうぞ。」

彼はあの癖のある小走りでレジの方に向かっていった。

「…なんか、本当おもしろいよね。今までに見たことないタイプっていうか…。」
「…そうね。確かに現代人って感じはしないわね。」
「…ちょっとツボかも。」

それってちょっと気になるってこと?って聞きたかったが、
そこで電話が終わり、藤本さんが戻ってきてしまったので聞けなくなってしまった。

「すんません。お待たせしまして。」
「良いんですよ。それより、あれって黒電話ですか?」
「そうすよ。うちはずっと黒電話す。」
「へーすごいですね〜初めて動いてるの見ました〜。」
「呼び鈴が大きいんで、うつらうつらしてると起きれて良いすよ。」
「あはは、勤務中、寝ちゃだめじゃないですか。」

こうやって見ると、サヤカと藤本さんって結構お似合いなのかも。
何となく悲しくなる。
何で悲しくなってるかはわからない。
本当はわかってるけどわからない事にする。


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