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コンビニ草紙
【理想の恋愛 恋愛小説】

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コンビニ草紙 第五話-2

「それでは、長い間お邪魔しました。」
「へぇ。こちらこそありがとうございました。」
「ではまた細々とした事でご連絡させて頂くこともあると思いますが、
よろしくお願いします。藤本書店のコラムが出る号はお店にお送りいたしますね。」
「そんなしてもらわなくても良いですよ。お手数かけまして。」
「いえいえ、また遊びに来ます。」

そういうとサヤカ得意の営業スマイルを藤本さんになげかけて店から出る。
私も軽く会釈をしてお店を出た。

「サカモトさんも、また。」
そう言うといつもみたいにニッっと軽く笑って引き戸を閉めた。

少しドキっとした。

また、コンビニでって事?
一瞬色々考えてしまう。

―この前の自分に訂正。
これは多分恋じゃないなんて言ったけど、
これは…多分恋に近い感覚なのかもしれない。

長い間恋愛をしてないと『興味』と『気になる』が一緒になってしまっているのかも。
ただ、恋だと分かったと同時に少し打ちのめされた感覚になる。
可愛くて家庭的な感じの女と、サバサバしてて料理もロクに出来ない女。
男だったらどっちが良いか。
聞かなくてもわかる事だ。

会社に戻ると案の定、サヤカは興奮気味で終始藤本さんの事を話題にしていた。
私も彼女みたいに大体的に周りに言えたら良いんだろうけど。
カワイイって得だな。
ひがんでも仕方がないとは思うけど、サヤカが時々羨ましいとは思う。
考えないようにしよう。仕事だ仕事。
そうだ、明日は休みだし、久しぶりに外で飲んで帰ろう。
そこで私は編集長を捕まえることにした。

「カイ編集長ー。今日お時間あります?」
「え?何?良いネタ持ってきたの?」
「え、違いますけど、飲みいきません?」
「良いけど、私の事潰さないでよ。明日午前中から予定が入ってるんだから。」
「ありがとうございまーす。」

カイサオリはやり手の女編集長で私よりサバサバしていて、男らしい。
入社時から何かと力になってくれている。
唯一弱音を吐ける人物と言っても良いかもしれない。
だいたい悩んだ時やモヤモヤした時は飲んでぱーっと忘れるのが私
のやり方だ。
特に何が解決する訳じゃないけど、飲んで寝る。
それで次の日には忘れる、ようにする。
こんなやり方しか私は気持ちを切り替える方法を知らない。
感情の電源をオフにして、黙々と作業に打ち込んだ。
退勤時間まであっという間に時間が過ぎる。
デスクで大きく伸びをすると、編集長が「飲みに行くぞー」
と口だけ動かして既にドアの前で待っているのが目に入った。
慌てて私は支度をしてタイムカードを押し、編集長と一緒に会社を後にした。


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