だから、世界は美しい-9
じいちゃん
じいちゃん
もっと話したかった。
もっと話せば良かった。
もっとじいちゃんの世界を知りたかった。
どれくらいそうしていたのだろう。ふと窓から、オレンジ色の光がゆらゆらと微睡むように差し込んでいるのに気がついた。
―――夕日だ。
その瞬間、無性に絵が描きたくなった。じいちゃんとの思い出を描きたい、そんな衝動に駆り立てられた。
スケッチブックと絵の具やパレット、それからじいちゃんの絵を手に取る。
じいちゃんと見た景色を描こう。じいちゃんが美しいと言った世界を描こう。
僕は重たい玄関の扉を開けて、茜色に染まった美しい世界へ飛び出した。
end