bittersweet 2-1
―俺らは、世間一般で言う、ねじ曲がった関係にある。
それは、否定しようもないし、事実。
「坂ちゃん、待って!」
サークルの練習が終わって、自分の学部棟に帰ろうとした時。
早足で歩く、さかと沙紀ちゃん、それにへばり付くように、一緒に歩く男を見た。
「ねぇ、ちゃんと、話そう? ほら、送っていくし」
「…あの、今日は沙紀と帰りますので」
突き放すように言う、さか。
それに執拗に食い下がる男は、自分の声の大きさに気付いてはいない。
他のサークル仲間も、何事かと、注目するくらいに、だ。
「おーい、紘平行かないの〜?」
「えっ!あ、あぁ〜今行くわ〜」
すごく嫌そうな、さかの顔が気になったけど、俺がしゃしゃり出ても、何にもならへんし。
そう自分を納得させて、学部棟へ向かった。
「紘平ってさ、もう、坂ちゃんとは、なんにもないの?」
「…へ?なんやの、いきなし」
今日は、サークル内の男たち、恒例飲み会。
お酒が大好きな俺は、いつもめっちゃ飲みまくってる。
めっちゃ、テンションハイ!!なはずなんやけど。
なんか、いきなり、和也さんが真剣そうな顔で、そう聞いてきた。
「さかって、もう、俺ら別れてますやん…」
「そうかもしれないけどさ、紘平はもう、坂ちゃんの事、好きじゃないんだ?」
「…」
「坂ちゃん、紘平と別れてから、狙ってたりする人多いよ?」
「…知ってますよ、昨日武村さんとか、猛プッシュしてはるん見ましたし」
「ああ、武村さん、ね」
「みんなの前で、めちゃめちゃ追い回してはったやないですか」
「…紘平はさ、それでいいの?」
武村さんは、サークルの先輩で、俺や和也さん、…さかの先輩でもある。
確か、俺と同じ代の美人な彼女が居たはずなんやけど、別れたらしい。
その、別れた原因というのが、俺の元彼、…『さか』が関係している。
関係しているっていうても、ただ、武村さんが、俺と付きおうとる時から、さかの事を好きやったって事だけやけど。
そやから、俺と別れるのを密かに待ってたみたいや。
そんで、猛プッシュ。
最近、それがさらに激化した。