bittersweet 1 -4
「ねぇ」
「んー?」
「武村さんの事なんだけどさ」
…一瞬、こーへい君の腕に、力が入って、また、ゆるりと抱きしめ直される。
「こーへい君、今日、みてた?」
「…うん」
「そっか、きっとみんな気付いてるよね、あんなにあからさまなんだから」
どうにかならないのかな、はははっと、軽く笑って言う。
そうすると、こーへい君の瞳が曇った気がした。
「どうしたの?」
「…さかはさ、俺にどうしてほしいん?」
「…え?なに、が…?」
「武村さんの前で、無理矢理ちゅーしてもよかったん?」
「俺のもんやって、手出すなって」
「こーへい君、何言って…」
そう言いかけた私の言葉を遮るように、こーへい君は口づける。
こーへい君の舌が差し込まれ、中で蠢く。
逃げようとして縮こまった舌は、簡単に捉えられて、吸われる。
―さっきとは、違う。
少し、強引で、胸が、苦しくなる。
それは、キスのせい?
それとも、グッと私を抱きしめる力が強まって、胸が苦しいのだろうか。
今の私にはもうわからない。
ただただ、降り注ぐキスを受け止めて。
「……ふっ!…苦しい、よっ…」
そう、なんとか訴えると、ようやく解放してくれた。
「…ごめん」
こーへい君は、とても悲しそうな顔して、ポツリと呟いた。
それは何に対して謝っているの?
そう、言葉にしようとして、やめた。
そんなこと言っても、こーへい君を悲しませるだけだ。
だって、私たちは、もう、とっくに終わっている。