bittersweet 1 -2
こーへい君。
サークルの先輩なのに、私がそう呼ぶのは、奴が、私の元彼だからだ。
こーへい君とは、私が一年生の時に半年くらい、付き合っていた。
同じサークルで、いつも一緒にいて。
結構周りにも知られていて、よく冷やかされたりもした。
みんなの前では、中々素直になんてなれない私。
いつも憎まれ口たたいちゃうし。
なのに、こーへい君は、いつも笑っていて。
それがさかの愛情表現やって、俺はわかってるでって、そう言ってくれてた。
でも、だんだん二人の時でも、素直になれない自分が増えて。
大好きなのに、それを素直に伝えたいのに。
そんな自分がすごく嫌で、仕方がなかった。
あの時。
思わず、もうやだって、言ってしまった時の、こーへい君の悲しそうな顔は、忘れられない。
きっと、いっぱい不安で悲しい気持ちにさせてきた。
あんな悲しそうな顔をさせているのは、私。
結局、あれ以上、そんな自分に耐えられなくて、私は逃げ出した。
…先輩と後輩に戻るだけだ。
これ以上、一緒にいたら、きっと嫌われちゃう。
嫌われたくなんかない。
それならいっそのこと、嫌われる前に、離れてしまおう。
臆病な私は、ずるい決断をしたんだ。
そう、決めたはずなのに。
今の私たちの関係って、何なんだろう。
カタカタカタ。
ピーッ。
はっと、我にかえる。
いけない、いけない。
こーへい君用につくった、ブラックコーヒーを少し貰って、自分用に温めたミルクに加える。
砂糖もたっぷり。
甘い甘いコーヒー牛乳だ。
あんな苦いのなんて、飲む気がしない。
というか、あれは飲み物ではないはずだ。うん。
「はい、酔っぱらいさん」
「おっ、ありがと〜、さか」
できたてのホットコーヒーにご満悦な、こーへい君。
縮こまって、コーヒーを飲む姿は、とても年上の先輩には思えない。
一つしか違わないからだろうか。