エンジェル・ダストD-3
東都大学。
恭一達は、西側の実験棟に間宮を訪ねた。
「正直、半年も前の事ですからねえ」
3階にある細菌、防疫の実験室。その隣の部屋──かつて、大河内の遺体が発見された現場─で恭一達は間宮と相対した。
「まあ、そう仰らずに。あなた以外、大河内氏の詳細についてご存じの方はいないのですから」
大河内の後釜に教授となった間宮は、困り切った顔で、机のイスにふんぞり返っている。──思い出したくないと言いたげに。
恭一が訊ねる。
「あなたは事件直後、担当刑事に──大河内氏は自殺でない─と、言われてましたよね。その詳しい理由を教えてもらえますか?」
間宮は、──またか─と言いたげに舌打ちをして答えた。
「警察の調書にも載ってるはずですが、大河内氏は防衛省依頼のウイルス特定作業に掛かっていました」
「しかし、衝動的に自殺されたとは考えられませんか?」
恭一の逆説的なアプローチに、間宮は首を振る。
「あり得ない。氏は、亡くなる前日に私を空港──陸自の帰還部隊の調査─に向かわせたんです」
「それは、亡くなった方と同じ部隊員が帰国後に受けた対応が、一般の防疫措置しか受けていない。という訳ですね」
間宮が大きく頷いた。
恭一が質問を続ける。
「では、その部隊名はご存じですか?」
「そこまでは…私は担当医に確認しただけですから」
「担当医とあなたの間柄は?」
「同じ大学の同期です。その彼に検査項目を聞きました」
「では、事情を訊いた医師の名前を教えて頂けますか?」
「そ、それを訊いてどうするんです?」
逆の問い質しを掛けた間宮は、苦い顔──明らかな不快感─を表す。
「私達は仕事上、ダブルにチェックするのが当たり前なんですよ。
あなたの情報が──生き─かどうか、調べる必要が有るものですから」
恭一の言葉に、間宮は憤慨寸前になった。
「だったらッ!こんな場所に来る必要は無い。自分達で探し回ればいいじゃないか!」
「気分を害されたのなら謝ります。しかし、事は2人の命を奪った内容ですから」
疑問符の顔を浮かべる間宮。
「2人の命だと?それは、どういう意味だ」
訝しげな表情で、恭一と五島を交互に見つめた。