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魔性の仔
【その他 官能小説】

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魔性の仔〜Prologue〜-2

「…ん……う…」

 倒れた身体が寝返りを打つように反転した。刈谷は生活反応が有った喜びより、露になった容姿に目を奪われた。
 整った目鼻立ち。白い肌、髪色は金というより赤毛に近い。
 そして、白いワンピース・パジャマから露出した手足が若さを表していた。

「何で…こんな娘が、こんな山奥に…?」

 どう見ても外国人の容貌。そんな娘が山奥から飛び出し、目の前に倒れている。刈谷は状況に対し、当惑する。

「キミ!キミ!大丈夫か」

 やや冷静さを取り戻した刈谷は、再び彼女に声を掛けた。

 ──…!

 少女の目が開いた。その双眸に刈谷は息を呑む。──異様な。そして美しいピジョンブラッドの瞳に。

 少女は手を路面について身を起こそうと動いた。刈谷は慌てて跪き彼女の背中を支えた。

 ──なんて軽い…。

 腕に掛かる手応えの無さに驚く刈谷。少女は不思議なモノでも見るように、ポカンとした表情で刈谷を見た。彼女もまた状況が飲み込ていないようだ。
 刈谷は、精一杯の笑顔で声を掛けた。

「君は道に飛び出して、ボクのクルマに轢かれそうになったんだ」
「…う…ああ…あ…」

 少女は、刈谷の言葉に反応をみせたが言葉にならない声を発するだけだった。
 刈谷はさらに問いかける。

「ボクの言っている意味は分かるか?」

 少女はコクンと頷いた。

「身体は…どこか痛いところはないかい?」

 今後は首を振る少女。

 ──失語症か?または部分的逆行性健忘で言葉を忘れたのか。

 刈谷には、わずかながら脳に関する医学的知識があった。

 ──いずれにしても、こんな山奥に置いていくのは危険だ。

「家は…何処から来たか覚えてるかい?」

 刈谷の問いかけに、少女は俯き首を振る。──分からない─と。

「君はそこから出て来たんだ。どうやって来たんだ?」

 刈谷は、彼女がその場に至った質問を幾つもするが、そのすべてに──分からない─という仕草を繰り返すのみだった。

 ──困ったな…。逆行性健忘のため思い出せないのか。

 刈谷はそう思った。


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