reality ability‐第9話‐終焉の闘いへと、冥界に‥‥‐-3
‐一方、元デスケイブ‐
皇希と少し呼吸が乱れた織音がいた。推定、数万という数だろうか。2人も背中合わせだった。
「‥‥織音。これを使え。これなら倒せるだろう。」
皇希が長剣を差し出した。何処にも変化が無いただの長剣に思えた。
「‥要らないわ。私だけの力で解放してあげたいわ。」
織音が断った。自分の力だけで解放させたいらしい。
「そうか、解った。力だけではなく、想いも込めるんだ。‥‥見本を見せてやる。」
皇希が言った。また、長剣を構えた。
「“真の型、無放剣(むほうけん)”。‥‥無垢なる輝きを放つ真実に耐えられるか?」
皇希が目の前の邪神に言う。余裕の表情で、勝ち気な声色で。
「‥‥‥」
織音は少し怯えていた。それは剣に対しては明らかだった。何故なら、今の長剣の放つ雰囲気は異様な殺気と不可解な清楚感を放っていたからだ。
善と悪、希望と絶望、陽と陰といった相対的な存在があの剣に濃縮されたような雰囲気だ。‥‥真実、それは光と闇かもしれない‥‥。
その不思議で威圧的な雰囲気に邪神さえも後退り出す者もいる。
「‥来ないならこっちからいくぜ?」
皇希は剣を居合抜きするように腰に回す。日本刀みたいに鞘はないが格好は間違いなかった。
「刹技(せつぎ)‥‥翔撃(しょうげき)。」
皇希はそう言った。すると、フワッとした風が織音に吹いた。織音には風だけだったが、皇希の前の邪神には風だけではなかった。
前にいた者から次々と傷が出来始めていく。何十人とも並んでいるが、後ろの方まで貫通するように傷が出来る。
だが、皇希は言っただけだった。いや、速すぎて見えなかったのだ。織音も違う方向の邪神も見えなかっただろう。
「織音、飛べ。‥‥極武‥‥円輪波動。」
皇希が言った後、織音は慌てるようにその場で皇希の身長を越えるように跳んだ。
次の皇希の攻撃は目の前の敵ではなく、周囲全体へと行き渡った。凄まじい衝撃が邪神を襲った。そして、解放されるように消えていった。
「‥‥極武。」
着地した織音は驚いた。皇希が言った言葉に。
「‥‥あいつは俺だ。使える道理は幾らでもあるぜ?」
皇希が織音を見た。いつの間にか、剣を消していた。そして、今の自分には使える理由は幾らでもあると言った。
「‥‥解ったわ。この事は聞かないわ。」
織音はそれ以上求めなかった。いや違う。諦めたのかもしれない。皇希は何も言わないから。
「真は‥‥真実は俺にとっては変えられない現実だ。だから、求めるモノは限りなく不可能なんだ。」
皇希は少し悲しげに言った。それを聞いた織音が笑顔になり答える。
「‥ううん。不可能じゃないわ。皇が求めて自分で道を作ればいいのよ。」
そう言われた皇希は驚いた。次第に笑顔になった。数ヶ月ぶりのただの笑顔だった。
「ありがとう。織音のその優しさが好きだ。」
織音は顔を赤くする。今の皇希に急に言われて動揺しない織音じゃない。恥ずかしいらしく顔を背ける。
「‥‥バカ。」
織音が本当に小さな声で呟く。
「織音。行くぞ。」
皇希は織音の声には気が付く事なく、声を掛けた。織音は振り返って後を追った。