やっぱすっきゃねん!VF-4
「なんだか、変な形だね」
目の前に置かれたオムライスに対し、修はしげしげと見つめていた。
「その玉子の真ん中に、切れ目を入れてケチャップを掛けるの」
言われたように膨らんだ玉子に切れ目を入れると、はらりと花のように玉子が広がった。
「へえ、姉ちゃん。やるじゃん」
「あ、味は保証しないよ」
2人はスプーンいっぱいにオムライスを注ぐと口に運んだ。
途端に修が難しい顔を佳代に向けた。
「塩気が足りないよッ!コレ」
──本当だ。味がしない。
修はキッチンから塩コショウを持って来て、軽く降ってから再び食べてみた。
「あっ、これなら美味しいよ!」
──本当かいな…?
修の意見に半信半疑ながら、佳代も同じように塩コショウをふって食べてみた。
明らかに鶏肉の旨味やケチャップの酸味を際立たせ、味は良くなった。
──まだまだ。母さんにゃ敵わないや…。
下味のわずかな違い。佳代にとって、難しく思わせるモノだった。
「あッ!日が射してる」
昼食を終えたひと時。佳代が玄関前から外を眺めると、雲間から日光が顔を出していた。
「行くよ!」
焦る思いが、中に居る弟への声が大きくなる。
「分かったから。ちょっと待ってよ!」
心配症の修は、わが家の戸締まりを確認してから玄関扉を施錠して出て来た。
「ところで、何処に行くのさ?」
「先の公園に行って、あんたはキャッチャー役よ」
「あんな遠くまでッ!2キロはあるじゃん」
「ついでに走り込めば準備運動になるでしょ!」
姉の強い誘いを弟は断ることが出来ず、2人はまた駆けだした。
「あれえ?」
15分ほどで公園の広場に到着した佳代の目の前に、見慣れた顔が揃っていた。
「おうッ、佳代遅いぞ」
直也に稲森、淳、中里のピッチャー陣に達也、下加茂というキャッチャー、それにレギュラー・クラスが数人集まっていた。