やっぱすっきゃねん!VF-3
「修ッ!急いで」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
正午前。テストを終え、皆が明日のテストに備えて急ぎ足で下校する中、学校の正門を駆け足で去って行く佳代と修。
「私にゃピッチング練習もあるんだからさ。あんたも手伝うのッ!」
「そんな…オレだってテスト勉強があるんだぞ!」
走りながらの姉弟喧嘩が始まった。
「あんたは1年だから…多少サボっても影響ないよ。それより…私の練習に付き合いなッ!」
「そんな…無茶苦茶な…」
「…全国に…行くためだから」
殺し文句。修にとって、それを言われたら従うしかない。
「分かったよ!」
不満ながらも姉の意見を受け入れる。だが、修もただでは起きない。
「だったらさ。オムライスを作ってよ」
「エエーーッ!」
佳代の足が止まった。
「オムライスって、あんた…」
「この前、母さんに習ってたじゃない。どうせ家に帰ってもレトルト・カレーだろ。だったらさ」
弟の駆け引きの上手さに、佳代は閉口するしかなかった。
「…分かったよ。美味しくなくても文句言わないのよ」
「分かってる」
2人は、再び駆け出した。
自宅に到着すると、雨は止んで空が白み始めていた。
「あんたも先に着替えな」
佳代はそう言うと自室に入り、制服をハンガーに吊してTシャツとジャージに着替えた。
──昼ごはんか、イヤだなあ。
憂鬱な気分で下へ降りて行くと、修が後ろから──姉ちゃん、早く─と急がせる。
「わ、わかってるよォ」
仕方なく冷蔵庫を開け、材料の鶏肉に玉ねぎ、冷やごはんを取り出した。
まずは鶏肉を一口大に切ろうとするが、皮が滑ってなかなか上手く切れない。
「姉ちゃん…大丈夫か?」
見かねた修が声を掛けた途端、──いいから!あんたは向こうに行ってな!──と暴言が飛んだ。
修は仕方なくリビングに逃げた。
佳代は落ち着きを取り戻し、スライサーを使って玉ねぎをみじんに切って材料を揃える。
フライパンにバターをひき、冷やごはんは予めレンジで温める。
鶏肉と玉ねぎを炒めてから、ごはんを加えてケチャップ、それにスプーン1杯の水を加えた。
こうすることで、ごはんがパラパラになるからだ。佳代はフライパンと格闘しながらも、なんとかケチャップ・ライスを作り上げた。
次はオムレツだ。溶き玉子をフライパンに広げた佳代は、生焼けで火を止める。
生焼けの玉子をラップで包み、ケチャップ・ライスと共に1分ほどレンジに掛ける。
出来上がったところでラップを取り、ライスの上に盛りつけると出来上がりだ。