やっぱすっきゃねん!VF-13
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大会当日。
今年は、永井の要請も有り、学校の方が出発式を開いた。
午前7時。学校職員に生徒会が前で野球部を見守っている。
──そんな中、
「佳代。なんだ…その頭」
整列の中、直也に達也、淳、稲森の同級や、田畑、下加茂などの下級生まで、佳代を見て苦笑している。
「ジロジロ見ないでよッ!う〜ッ!」
悪態をつく佳代は顔を赤らめている。
──少しショートにって言ったのにィ、これじゃベリィショートじゃない。
言う通り、頭の形に貼り付くように切られた髪は、自身、小学生の頃でも憶えが無いほどの短さだ。
「まるで、春高バレーの選手みたいだな」
「うるさーいッ!野球は頭の格好でやるんじゃないでしょ!」
直也の掛け文句に佳代の応戦。いつもの漫才さながらなやり取り。
そんな気持ちを和らげるアクシデントも有ったが、式は粛々と過ぎて行った。
青葉中は、初日の第1試合。相手は東海中。
長年に渡るライバル校。──相手にとって不足無し─と、部員全員は思った。
永井が整列する部員の前に立つ。
「…今から、ベンチ入り16名を発表する」
ざわついた部員達から声が消えた。──こんな間際の発表は初めてなのだ。
永井の狙いだった。
──際まで伝えず、出場を渇望する者を発奮させたい。
「1番サード乾…2番レフト足立…3番ピッチャー川口…4番キャッチャー山下……」
次々と名前が発表される。呼ばれた者は、無言の中で強い闘志をたぎらせた。
「…8番センター加賀…9番ライト澤田」
皆が静かな闘志を表す中、加賀だけは頭を垂れ、両手の拳を腿に叩きつけた。
──選ばれた!やってやる!
腹から湧き上がる想いがそうさせた。
30人乗りのマイクロバス5台が移動に使われた。これも初めての事だ。
永井に葛城、一哉は試合に出場する16人プラス控えの中に乗り込んだ。
「佳代ッ!髪、切ったんだな」
学校から移動しだした。バスのエンジン音だけが車内を支配する。そんな中、一哉が佳代に声を掛けると、途端にバスの中は笑い声に包まれた。
「コーチまでバカにするんですかあ!?」
佳代は真っ赤な顔で一哉を睨み付けた。
「まてまて、オレは似合ってると思ってるんだぞ?」
「コーチッ!本気ですか?」
間髪入れず、一哉に返したのは直也だ。