coloraffair〜みんなの気持ち〜-2
一通り作り終わりテーブルに並べて2人で食べ始めた。
うっかりしていた。
餃子は美衣菜の大好物だったのに絵里衣のリクエストのまま餃子を作ってしまった。しかも体は無意識にニンニクをいれないという美衣菜用の餃子を作っていた。
もちろん絵里衣は知るはずもなく味が違うと言いながらパクパク食べている。
―忘れられないよな……―そう思った。
「玉ねぎなんかないよね?」
不意に絵里衣に言われてビックリすると、絵里衣は目の下に手を当てていた。
情けないものだ。
知らないうちに泣いていた。別れを切り出されてから初めて泣いた。今まで溜まっていた分、涙が止まらなかった。絵里衣はどうしていいかわからずおろおろとしている。
―こんなときは思いきり泣いた方がいい―
頭の中にそんな言葉が浮かび、声を上げて泣いた。
人生で初めてこんなに泣いた。
なんとか夕飯を食べて後は夕飯のときのように無意識のうちにベッドまで来て寝ていた。そんな夜なのに夢ではなんだかとてもいい気分になれた。なんというか心がとても優しくなれた気がした。不思議な感覚だった。
GWは宿題に追われ―なんでかたっぷり出され―美衣菜のことはひとまず深く考えずに済んだ。しかしまた学校が始まると皆にからかわれネタにされ、ここまで本気と思ってないやつらの相手をすると思うと憂鬱だった。
憂鬱はさらに続きまた雨だった。今の気持ちに比べれば軽いが、雨は大嫌いだった。入試、家族で初めての旅行、体育祭は全て雨。そしてなによりあの別れた日も。
登校するとほとんどみんな来ていた。みんなダルそうだ。そりゃ真面目くさって勉強していたのは僕くらいだろう。
「おう、クロ〜。隣に誰もいないのには慣れたかい?」僕と仲のいい集団にいたアカがいきなり、串刺しにしてくれた。
僕のクラスは全部で40人。ちょうど男と女が20人20人いる。
僕は冗談めかしくアカの頭を叩いた。心の中ではグーでいこうかと思ったがみんながいる前なのでやめようと思い止まった。みんなが笑う。僕も笑う。
―また泣いてもしらねーぞ―
そこへ
「あんまネタにしないであげてよ」千弥子がやってきた。美衣菜の親友だ。
「佐藤君もだけど美衣菜も罪悪感感じちゃうでしょ、あの子考え過ぎるから」
ちなみに僕は佐藤真夏、通称クロ。アカは小嶋晴。僕はいつも黒っぽい服を着ていてオーラが黒っぽい―こっちはよくわからない―からクロで、アカは名前の晴からなんとなくアカになったのだ。
「おれはわかるがなんであいつをかばうんだよ。ふったあいつが罪悪感感じるわけねーだろ。それにかばうなんてのはお門違いだな。」
僕は一気に言った。
みんなはあまり真剣に考えてないのでこんな勢いで僕が怒鳴って驚いていた。
「傷付いてるのはあんただけじゃないのよ」
「なんだと?」
言って担任が入ってきた。しばらくにらみ合っていたが注意され席についた。
くじ引きでひいたこの席は窓側の一番後ろ。景色がよく見えるので気に入っているが今見えるのは大嫌いな雨に濡れた校庭や、ビルやマンションだけだ。千弥子にああ言われてすごく腹立たしくて外の音なんか入って来なかったが、アカたち男子の叫び声で我にかえって前を見た。
漫画なんかでショックで雷に打たれるシーンがあるが、今の状態はそんな感じだ。
あのGW前の帰り道にすれ違った人が前にいる。手も服も顔も見てないが、わかる。性別すらわからなかったが、わかる。
あの僕と似た感じは忘れない。
再び外の音は聞こえなくなり、雨の音だけがうるさく耳に入ってきていた。