電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿 ―追憶編―-4
「ふっふー♪ 真琴真琴! あのね、ゆみこめゆみ作ったー☆」
「あ、お粥のことですねー。美由貴、真琴は本当にしんどいので出来れば加減、出来るわけないですねスミマセン」
美由貴とプクトはお粥を持って真琴の部屋に向かう。お粥の隣に赤まむしがあるのは、美由貴なりの気遣いだ。大概はツッコミと共に投げられるけど。それを分かってて止めないプクトもなかなか性悪だった。
「真琴☆」
部屋に入る。真琴は眠っていた。しかしご飯の時間である。電波天使には関係ない。布団をはぎ取ろうと、
「――とぅさん……かぁさん」
「…………」
美由貴のそれまでのハイテンションはなりを潜める。
代わりに顔に浮かぶのは、清浄で包み込むような、天使の笑みだった。
「――――」
「美由貴」
どこか感情を排したような、白い生き物の呼び掛け。
「いつまでこうしているのですか」
詰問のようでいて、しかし力はない。まるでテンプレートのように、平坦に。
対する美由貴も、人間味を排した、何処までも清浄な笑みでもって答える。
「――赦される限り」
「…………」
天使は巫女の顔に視線を落とす。
人外の視線がその夜、合わさることはなかった。
それを一人の人間が、ただ見ていた。
これは真琴の両親の命日の、前夜のこと。
堕天使は記憶を拒否する。
白き人外と人間は沈黙を保った。
そして巫女と天使は、追憶に想いを馳せる。