「あいつ」-2
そして、次のレースにも
俺はエントリーした
今回はリバーサイドカップの
７００キロレースだ
しかし、スタートの前日に
俺は意識を失い倒れた
病院へ運ばれ緊急入院
モコは関係者の車で
レース会場へ運ばれた
順調なら、今夜には
余裕でゴール出来る距離だ
モコがスタートした頃に
俺の容態は更に悪化…
大空の危険の中を
主人の事を考えて飛ぶモコ
また頭を撫でられたい
それだけを考えて…
病院の一室
病魔と闘う俺
しかし…
俺は病魔に勝てなかった
頑張ってるモコの頭を
この手でもう一度撫でてあげたい…
ありがとう…モコ…
病室から、すすり泣く声が…
その様子を、悲しい瞳で覗く一匹の鳩…
レース中に、何かを感じ
モコはレースを放棄してここへ来たのだ
しかし…
もうモコを褒めてくれて
頭を撫でてくれる主人は居ない…
その日からモコは、
自分の鳩舎に、二度と帰ることはなかった 【完】