僕らの関係 最終話 いつも隣に……。-8
「あはは……あはははは……あーおかしい」
涙が止まると、乾いた笑いが響いた。彼女を見る三人の顔はどれも複雑で、恋敵である里奈ですら、同情の眼差しを向けている。
「幸太ちゃん、誰でもいいの?」
「ちがうよ……僕は……」
「何が違うの? 里奈ともセックスして、恵ともしたんでしょ? あの美雪って人は? やらせてもらえなかったの? 残念ね。あんたみたいの好きなヘンタイなのに
さ」
「由香、落ち着けよ……」
「なによ、あんただって哂ってるんでしょ? あたしのこと! 処女捨てるのに幸太ちゃん使ったの? 彼氏はどうしたのよ? そいつと寝なさいよ!」
宥めようとする恵にも怯むことなく噛み付く由香。普段溜め込んでいる気持ちが爆発したらしく、その勢いに圧倒される。
「ね、里奈はどうだった? 幸太ちゃんの初めてもらったんでしょ? あんあんいいながらしたの? それとも痛かった? 参考にしたいから教えてよ」
「ユカリン……」
「何がユカリンよ。あんたさ、電話ではあたしのこと由香って言ったでしょ? なんで? 処女だから? 下に見てるんだよね? 馬鹿にして!」
グラスを叩きつける手に思った以上に力が入り、ミシリと皹が入る。そして、割れた。
「由香ちゃん!」
テーブルの上に敷かれたクロスに赤いシミが出来る。幸太はふらつきながらも手ぬぐいでそれを拭おうとする。
「触らないで! もう幸太ちゃんなんて嫌い! だいっきらい! あっちいってよ!」
「だって、手、ダメだよ手当てしないと」
「自分で出来るわよ、これぐらい! さっさと出て行ってよ、ここは私の家よ!」
「一人になんか出来ないよ」
腕を掴む幸太を乱暴に押し返す。彼は里奈に抱きかかえられるようになり、さらに彼女をイラつかせる。
「私は出来るわよ! あんたみたいに射精したら泣いちゃうガキ、いらないもん!」
「由香、お前少し言いすぎだぞ! いくらなんでも……」
「は、何よ。出て行かないの。わかったわよ、好きにすれば? ここで三人でしっぽりすればいいわ! なんならゴムも貸し出しましょうか? それともナマでするの?
そうよね、そのほうが気持ちいいんでしょ!」
六つの視線に耐えられなくなった由香は、踵を返すと居間の扉を乱暴に開け、階段を駆け足で登る。
残された三人は、ただひたすら重いため息をついていた。