僕らの関係 最終話 いつも隣に……。-20
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時は師走の終わり、雪の降る夜。幸太たちは、もう一つの約束である大晦日を一緒に過ごすため、由香の部屋に集まった。
「出来たよ! なんでも選べる豪華バイキング年越しそば!」
台所を借りて二時間かけて打った手打ちソバは、花鰹の踊る薄色の汁と一緒に運ばれてきた。
桜海老の散りばめられたかきあげに、車えびのてんぷら。とろろのすりおろしとなめこに大根おろし。ついでに紅葉おろしもそえられ、彩りも鮮やか。
エビの好きな里奈は由香の目を盗み、ひょいと尻尾を掴んで口に放り込む。
「あ、こいつ! あたしも狙ってたのに! 返せちくしょー!」
「へへーんだ、のろまなケイチン、ここまでおいでー!」
部屋の中を走り回る彼女は高校生というにはまだ幼く見えるが、それを追う恵もまたしかり。
「あ、こら二人とも! ちゃんと座ってから食べなよ」
由香は室内を駆け回るやんちゃな子に、眉をしかめていう。
「どう、おソバ? 僕ね、一生懸命作ったんだよ」
「うん、おいしいわ……」
初めての手打ちソバは腰が無い。柔らかく、時折芯の残る、不器用なつくり。
ソバを幸太とするなら、ぱりぱりしたかきあげは見栄え華やかな里奈。威風堂々とする一本作りは恵だろう。そして粘り強くて味のあるとろろは彼女かもしれない。
――私達みたいなおそばね。でも、おいしいな。
由香はそばにとろろを絡めながら、ずずずと啜った。
外から煩悩を討ち払う鐘の音が聞こえると、由香は新たな気持ちでソバをすすることにした。
完