僕らの関係 最終話 いつも隣に……。-14
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由香は思わず布団を掴んでいた。
背中に触れるシーツは冷たく、身体に溢れた熱をしっかり奪ってくれる。しかし、へそよりやや下の辺りから涌き出る火照りは収まらず、それこそ火がついてしまうと思うほど。
そして羞恥心。
布団の下から聞こえてくる「ぺちゃ、ちゅう」という音は彼女の秘裂を舐る音。それも直接、彼が、舌で……。
耳を塞ぎたいのに、身体が勝手に縮こまり、踏ん張ろうにも口に力が入らず開いたままの唇からは「あ、ああ」と短い声が漏れる。
もぞもぞと蠢く舌は陰唇をさすり、女の部分を優しく撫でてくれる。
強い刺激を与えなければ響かなかったはずの芯が、唾液に塗れた舌先で触れられるたびに軸がずれるような刺激を生む。
――なんで? なんで幸太ちゃんだと? ずるいよ!
ペッティングをされた彼女の身体は日々疼きを覚えるようになり、日々何かしらなもので慰めていた。
最初は指で充分だったが、中指が処女膜に触れたとき、快感が変に高まってしまい、それが二本で足りなくなったとき、より強い刺激を求めてマジックにゴムを被せた。しかし、快感を知るたびにそれまでにかかる時間が比例して増え、終えたときにあそこが赤くなってしまった。
それを見られるのを恥じた彼女は、今日までの数日間、自慰を控えてきた。
彼にはクールな自分を見せたかったから。が、すっきり出来ない気持ちが渦巻き、結果的に彼の愛撫を必要以上に感じてしまっていた。
「や、あ、ダメ……だってば……だって、幸太ちゃんの舌……エッチすぎ……私、わたひ……」
呼吸が短く早いものになる。宙を舞う視線は天井の木目を数え始め、それが五十を数えた辺りで思考が止まる。
括約筋がきゅっと締まりだし、それがとまらなくなる。
「や、やめて、幸太……ちゃん、わたひ、いま、ひってう、ひってうから……らめなのぉ」
舌っ足らずの声を上げ、打ち震える。例えるなら伸びきったゴムが限界に来てちぎれるようなふう。瞼の裏で火花が散ると同時に、彼女は全身が弛緩した。
――ビールじゃなくて良かったわ。
もし、そうだったら今頃、彼女はシーツの上に世界地図を描いていただろう。布団の中でぺちゃぴちゃという音がじゅるるごくんに変わったのを知り、そう思った。
――潮吹き? じゃないよね。でも、私からもれたもの、幸太ちゃんが啜ってるの? そんなの飲んじゃ病気にならない?
「幸太ちゃん……」
布団の中に手をいれ、彼と思しき頭を撫でる。
「そんなの飲んじゃだめ。恥ずかしいよ」
「だって、おいしいもん。由香」
呼び捨てにされるのがだんだん快感になる。
「それにさ、由香だって僕の飲むでしょ? お相子だよ」
あれを飲んだのはあくまでも打算があったから。最初はきっとそうだった。喉に絡まる濁り汁。青臭くて苦く、美容にはきっと悪影響を及ぼす男汁だが、彼の恍惚の笑顔を見るためならそれも苦しくなかった。