僕らの関係 最終話 いつも隣に……。-11
「ちょっと幸太ちゃん? なんのつもり?」
「由香!」
彼は名前だけ呼ぶと、そのまま唇を押し付けてきた。
この前感じたときは、ただショッパイだけの気持ちいいものだった。
今は冷えかけたそれをしっかりと暖めてくれる熱と、アルコールの深い甘みを感じた。
由香は舌先が入り込んできたのに気付かなかった。
唇に触れたのに気を取られていたせいだろうか? それにしては狡猾過ぎる。
「はむ、んちゅ、れろ……にゅぱ……はぁむ……」
自分は怒っているべき。
なのに、彼女は夢中でそれを求めた。布団の中で彼の手が触れたのをきっかけに、指の一つ一つが絡み合う。炊事洗濯をこなす彼の手はひび割れが目立つ。それでも唇は瑞々しく実った葡萄のよう。唇ではさめば果汁よりも甘くさせ、ワインよりも芳醇な男の香りを発する。
――幸太ちゃんのキス。やっぱり、皆としたから上手なの?
下腹部に突起が触れる。それは先っぽがジュンと湿っており、布越しでもわかるほどに熱く硬い。
――うそ、裸?
絡んでいない手で彼の身体に触れると、ドクンドクンと脈打つものが伝わる。
彼は何も着ていなかった。
一体なんの罰ゲームなのだろうと思いながらも、彼女は枕もとのスタンドをつけようと手を伸ばす。
白熱灯がぱあっと光り、周囲を照らす。
黄色い光に照らされる彼は、一糸纏わぬ姿で彼女を組み伏せていた。
「何考えてるの? 風邪引いちゃうよ」
「いいの。それより、手……見せて」
「え? ええ……」
もう片方に握っていた包帯で切れたままの手を覆う。よく見るとシーツも布団も、彼女の血で汚れていた。
「わ、あ、嘘、やだ……どうして?」
冷静になるついでに血の気も引く。彼女は再び取り乱しそうになるが、三度目のキスという荒業で無理に落ち着かされる。
「あ、むぅ……な、幸太ちゃん……どうして?」
「電気、消すよ。もう必要無いし……」
ネジ式のスイッチを回すと、辺りは暗闇を纏う。
そして訪れる淫靡な刺激。
喉をはみ、たまに歯を立てられるのはこの前と一緒。違うのは胸元を弄る手つき。
遠慮という言葉など知らないらしく、最初から直に乳房を揉んできた。
ひび割れの目立つ指先が走ると、身体の芯に訴えかけるものがある。思わず絡めた手に力が入り、彼の手の甲に爪を立ててしまう。
「あ、ごめん」
「由香、好き、好きだよ」
暗がりの中、目があった気がする。
由香は絡められていた手を解き、枕元に投げ出す。顎をくいっと上げ、視線を彼から部屋の隅へと向かわせる。
――せっかくムード出そうと思ったのに、夜這い? うふふ……ヘンナノ。幸太ちゃんのクセに大胆だよ。でも……いいかも。
身も心も彼に預けてしまおう。既に二人を卸し終えた彼だ、きっと自分も上手に捌いてくれるだろう。
――まな板の上の鯉? なら、女体盛りでもつくるつもりかしら?