cure side-Akito-1
俺、小川暁人。
身長、ルックス、成績共に『中』。
目立つ事もなく、だからと言っていじめられもせず、平凡に地味に生きてきた俺。
自慢出来るのは抜群の運動神経のみと寂しい限り。
そんな俺にある日青天の霹靂が起こった。
「小川くんが大好きですっ!よかったら理乃とお付き合いしてくださいっ!」
平凡な俺の生活に爆弾を落としたこの告白。
春日理乃。
同じクラスの春日は俺の対局にいるようなヤツだった。
抜群のルックスに可愛い舌っ足らずな甘い声。
綿菓子を女の子の形にしたら春日みたいになるんじゃないかって思う。
目立つ事この上ないそんな春日がモテないはずもなく、男子からの告白が引きも切らないとの噂。
実際に彼氏がいるのかいないのか知らないけど、見てるだけでホンワカした気持ちになるような子だ。
多分、春日に惹かれないヤツはいないだろう。
もちろん俺もその内の一人だけど、地味な俺が春日の視界に入ってるなんて想像した事もない。
だから春日にコクられても全く実感がわかなくて茫然とした。
「はぁ…」
マヌケな俺の返事を上目遣いで聞いていた春日だったが、俺がそれ以上何も言えずにいたら先を促してきた。
「あのっ…お返事は…?」
春日って本気で俺に言ってんのかな?
コクる相手を間違ってない?
でも目の前にいて間違うなんて有り得ないだろ…。
普段大して回転しない頭がフル回転して春日の告白の真偽を見定めようとしてる。
こんな時は何て返事したらいい?
その前に春日に本気かどうか確認した方がよくね?
「……よろしくお願いします…」
おわっ!
頭で考えるより先に口から出ちゃってるよ!
「こちらこそ、よろしくお願いします」
俺が握ったら砕けんじゃないかって思うような小さな手を春日は俺に差し出した。
もう、どうにでもなれっ!
後で冗談でしたって言われたらその時はその時だ。
俺は春日の手をそぉっと握った。