『スイッチ』-4
「酔っ払いすぎ!」
「このぐらいじゃ酔わないよ、僕」
知ってるよ、そんなこと。お酒でつぶれたしんちゃんなんて見たことない。
「あのね、ゆきちゃん」
重なってるしんちゃんの手が、一瞬ぎゅっとなる。
「自分でいうのもなんだけど、僕ってピュアボーイじゃない?」
「うん、そうだね」
「だからね、あんまり卑猥なことされると、すぐに期待しちゃうの」
「…ヒワイ?」
あたしから何かした…覚えはない。
しんちゃんは自他共に認める純情少年だ。悪戯したくなることはあるけど、今日だって同じベッドで並んで眠ってたけど、手を出した覚えはない。
『ゆきちゃん、オッサン入ってるよね』
なんていわれるぐらいに、あたしは色気ないはず。
眠気に負けてしんちゃんの肩を枕代わりにしたことはあるけど、そんなのよくあることだ。
わけがわからなくて、何を言われるのかと頭がぐるぐる混乱してる。
「こんなこと言ったら、ゆきちゃん引くかもしれないけど…」
いつもの軽い口調じゃない、とっても真剣な声。
あたし、ほんとに何をしたんだろう。どくどくいってる心臓が飛び出してきそうだ。
すごく、こわい。
「僕ね…ゆきちゃんが好き、で、す」
「…へ?」
ぐるぐるしてた思考回路が、ピタリと止まる。
「あーもう言わない!」
がばっとあたしを解放して、ミニタオルで頭がしがし拭きだすしんちゃん。
(あたしってやつはああああああ)
確かに『好き』って言われた。なのに、返事がなんて可愛げないのっ
嬉しい、嬉しすぎる。
軽い酔いなんかじゃないほてりがかーっと顔に集まる。
「しんちゃん?」
ことりとテーブルに缶をおいて、未だにがしがしやってるしんちゃんを呼ぶ。
「…そんなおもいっきり拭いたら、はげるよ?」
「なっ」
ようやくこっち向いた。
「あんね」
「あーあー!聞きたくない!」
「いやあの…」
お友達ですとかいうんでしょ、聞きたくないし、さっきの忘れて、なんて取り乱す姿が可愛くてたまらない。
「信之介!」
「は、はい」
「あたしも好き、です」
その後のしんちゃん、顔真っ赤にして、目潤ませて。
夢じゃないよね?ってあたしに頬っぺたつねらせるんだから、あまりにおかしくて愛しくて、笑ってしまった。
恋のキッカケなんてどこに落ちてるかわからない、あたしの何がしんちゃんの『好き』スイッチに触れたのかもまだわからない。
でもとりあえず、今は幸せ気分。