ネコ系女 #1-6
店を閉める頃には彼やネコのことなどすっかり忘れていた。
「あ、そういえば最近彼氏とどう?」
姫代がロッカーに物をしまいながら私に聞いた。
「ん、あれ?言ってなかったっけ?とっくに別れてる」
「えっ!?もう?どんぐらいだったの?」
「一週間…ぐらい?」
「相変わらず早いね〜」
「まぁね」
アレは向こうが悪い。
だってアイツ、二人きりになったら赤ちゃん言葉になるんだもん。
気持ち悪い。
これでも我慢した方だっつの。
【ネコ系女は嫌な部分を見つけるととことん嫌いになる】
ああー思い出すだけで鳥肌が。
「でね、この後合コンあんだけど姫代も行く?」
姫代は笑いながら首を振った。
「ううん、行かない。素敵な人がいればいいねぇ」
やっぱりな。
姫代が合コンに行ったなんて聞いたことがない。
正直、姫代が合コンに来ると私の立場が危ぶまれるので内心ホッとしている。
姫代がいると私の魅力が半減しそう。
「だと思った。姫代そういうタイプじゃないもんね」
うん、と姫代は頷く。たぶん『そういう』の意味は分かってなくて、とりあえず頷きましたって感じ。
「さっ…て。今日もいい男捕まえてきますか。じゃまた明日ねー」
「うん、お疲れ様!頑張って!」
私達は左右の道に別れた。
結んでいた髪をほどいて、私はカツカツとヒールを鳴らしながら自信たっぷりに胸を張って歩く。
すれ違う男が私をチラチラ見ているのにも気付いている。
私はネコ。夜に踊る綺麗なネコ。
さて、今日は当たりかハズレか。
私は数時間後に何が起こるかなんて気にもせず、ただウキウキと夜道を歩いた。
【ネコ系女は切り換えが早い】