ある日の雨の中の女-4
成美は思わず目に涙があふれた。
私の体、見てくれてるんだ。
夫は行為だけで私の体を全く見ようとも触ろうともしない。私なりにダイエットしてボディラインもキープしてるし、化粧も努力している。
でも夫は私を見てくれない。
「キャッッ!!」
高野が成美の花びらを吸いはじめ、舌を中に入れた。
「アーーー…!」
その瞬間、一度目の絶頂をむかえた。
それからのことはよく覚えていない。
成美も狂ったように高野の体中に口づけた。鼻、唇、あごから、のどや腹に顔を埋めた。
成美はふとかくん、と仰向けに倒れた。
その耳に高野がささやく。
「…れるよ…」
成美の足は大きく広げられ、成美の濡れた乳房や腹はほの暗い明かりの中で美しく、また淫らに揺れた。
「アッ、アッ、アッ、」
入ってくる―
懐かしい?
ううん、違う、前よりもっと―
「――――!!」
それから夜の間、二人は何度も繋がり、高野は成美の尻をちぎれんばかりにつかみ、何度も成美に打ちつけた。
疲れ果てて早朝は年若い恋人のように互いの背中を抱いて横たわっていた。
朝―
家路につくタクシーの中で成美が現実に戻るのにそう時間はかからなかった。
今日も曇り空、だんだん明るくなってきたころ成美の前に写った高野の顔には、確かに流れた年の跡が刻まれていた。
成美は自らの中に激情を感じなかった。
「とにかくは楽しかったんだわ」
でも、激情を感じないかわりにその言葉にも確証を持てなかった。
自分の心はどこにあるのか、それはまるで今日の曇り空、タクシーは沈黙の町の中に遠ざかっていくのだった。
end