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憂と聖と過去と未来
【幼馴染 恋愛小説】

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憂と聖と過去と未来 4-7

***

タクシーを降りると、おじさんは病院の前で煙草を吸っていた。

「おじさん」
「ああ…憂ちゃん」
「これ、部屋の鍵、ちゃんと掛けてあるからね」
あたしはそう言って、鍵を手渡した。
昔からよく、家族で出かけてるんだけど鍵を掛け忘れちゃったかもしれないから、鍵を掛けて持っておいてくれないかな、なんて頼まれることがあった。
「すまないね。さあ、こっちだ」
おじさんは煙草を携帯灰皿でもみ消すと、通用口の方へと向かった。
あたしも慌てて追いかける。

病院内の廊下を歩く。
とても静かで落ち着かない。

「ここだよ」
おじさんが扉を開けると、そこにはおばさんと聖の姿があった。

「…おばさん」
「憂ちゃん…」
おばさんもかなり疲弊しているらしい。
「……聖」
聖は何もなかったかのように眠っていた。
でも、やはり昨夜の出来事を思い返す度にショックで倒れそうになる。
血まみれの聖…
とても苦しそうな顔をしていた。

「…腹部を刺されたみたいなんだけど、犯人は斜めから半ば掠めるように刺したみたいで、運よく臓器はほとんど傷つかなかったらしい…」
「そうですか…」

聖が起きるまでここにいたい。

ただそんなことを考えながら、聖の顔を見つめていた。

どれくらい時間が経ったか。
扉がノックされた。

あたしは一瞬、お医者さんかと思ったが、入ってきた二人組の男性は全然違う格好をしていた。
見るからに、警察の人。

気を利かせて病室を出ようと思ったけど、正直、話が気になったし、警察もあたしを気にせずに話を始めた。

「…息子さんを刺した犯人ですが、捕まりました」

「え……?」
三人同時に同じような声を出したと思う。

「息子さんの携帯電話を調べさせて頂きましたところ、息子さんは午前0時頃、交際相手と思われる女性の元へ出向いているであろう履歴がありました」


え…まさか…嘘…でしょ?


「そこで我々が携帯電話のアドレス帳にあるその女性のアパートに事情聴取に行ったところ、自室で手を血まみれにした本人を発見、同時に凶器と思われる果物ナイフもその場で発見し、緊急逮捕いたしました」


佐山さんが…聖を…?


「容疑者は現在、署で取り調べを受けておりますが、おかしな言葉ばかりを並べていて難航しています。ですが間違いないでしょう。おそらく、交際での関係のもつれによるものだと思われます」


おじさんもおばさんも、黙って聞いていた。

あたしはその後の警察の言葉は耳に入らず、ただがくがくと震えていた。


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