憂と聖と過去と未来 4-5
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外の音で目を覚ました。
なんだか外からたくさんの人の話し声が聞こえてくる。
「なにかあったのかな…」
あたしは上着を羽織って外に出てみた。
「…なにかあったんですか?」
あたしは目を擦りながら、同じように出てきていた隣のおばさんに尋ねた。
「下にパトカーとか救急車が来てるのよ」
「え?」
一応、この辺一体はマンションや一軒家が密集する住宅街なので、あまりそういったことはなかった。
「通り魔かしらねぇ?迷惑だわ」
おばさんはそれだけ言うと、部屋に戻っていった。
あたしも部屋に戻ると、お父さんとお母さんも起きたらしく、あたしにどうしたの、と聞いてくる。
とりあえず、あたしは今おばさんに訊いたことをそのまま話した。
どうやら今は2時過ぎらしい。
あたしが今日はいろいろあって疲れたのに、なんて悪態を吐いたとき、家の電話が鳴った。
こんな時間に誰だろう。
『…はい』
すると電話の相手はひどく慌てていた。
『あっ!憂ちゃんかい!?』
『あ、おじさん』
その瞬間、なんだか全て気付いてしまった気がした。
『聖が…!聖が!聖が刺されたんだ!下のあの騒ぎなんだけどね!』
『……え』
『柊さんのところには伝えようと思って!』
『あ…今行くね!』
あたしはそう言って急いで家を出た。
エレベーターを使うのがもどかしく、階段を使った。
下るだけといっても、6階からは応える。
あたしは息を切らしながら、涙を堪えながらマンションの外に出た。
すると、目の前には大勢の野次馬と救急隊、警察官の姿が見えた。
「おじさん!」
「憂ちゃん!」
おじさんは泣き叫んでいるおばさんを支えていた。
恐る恐る救急隊のほうを見ると、おびただしい血がアスファルトを濡らしている。
「ひ…じり?」
そこで初めて変わり果てた聖を見た。
一瞬のことだったからよくわからなかったが、お腹から出血しているらしい。
救急隊は呼吸器を聖につけている。
「聖っ!!」
「憂ちゃん、おじさんとおばさんは救急車に乗るから、家のこと頼むね!」
「聖っ!聖ぃ!」
おじさんのそんな声が聞こえたが、あたしは聖の名をひたすら叫んでいた。
救急車が見えなくなっても。
これが、崩壊の始まりだった。