フリースタイル5-1
沙織に言ってしまった。
好きって言ってしまった。
しかもキスしてしまった。
俺は当然平手打ちを覚悟していた。
でも期待していたものは
なかった。
俺と沙織が出会ったのはまだ少し暑く、でもちょっと寒い…そんな中途半端な秋だった。
たまたま遊びに行ったclubで沙織はDJをしていた。
そうだな、第一印象は
"男らしい"
だったかな。
沙織がかける曲はどれも甘ーいR&Bで、特にLLcoolJをかけた時はエロい曲流すなぁって思った。
でもどれも俺の好きな曲だったから話し掛けてみたんだ。
「選曲エロいねぇ♪」
「…そりゃどーも」
そう言った沙織の顔は自信に溢れていて、そりゃあ頼もしく見えた。
「DJ始めてどのくらい?」
「1年」
「へぇー。あ、俺ラッパーのスネーク。よろしくね」
「あたし沙織。よろしく」
俺は女の子女の子した可愛らしい子が好みだったから、沙織なんて本当に男友達ぐらいにしか思ってなかった。
それから恭介にも紹介して、俺らはよく3人でclubに行くようになった。
「ねぇ、なんでスネークはスネークっていう名前にしたの?」
3人でゲーセンに寄った時、蛇のぬいぐるみを見ながら沙織は言った。
なんで俺がスネークっていう名前にしたかって、
それは人生最初に買ったレコードがスネークって曲だったからだ。
なんとも単純だが、名前なんてそんなもんだろう?