フリースタイル5-4
でも何も進展がないまま今に至る。
だって、俺まともな恋愛なんてしてこなかったからさ、どうしたら良いか分からなかったんだ。
沙織と会えるのは月3回くらい。
俺らのイベントには殆ど来てくれる。
だから俺は精一杯ラップに込めるんだ。
違う道を歩く僕と君
でもいつか落ち着く時に
一緒の道を歩きたいと
お互いにいつか歩みたい
僕は君に合わせるから
君は僕に合わせてよ
違う道を歩いてても
きっといつか同じ道を
でもきっと沙織は気づいてないんだろうな。俺の気持ち。
そりゃ俺だって女にモテない訳じゃない。
「お疲れー!!達也!!はい、どうぞ」
俺のライブの後いつもドリンクを持ってきてくれるナナ。
ナナはclubのスタッフをやってて、俺が初めてclub行った日に知り合った。
「今日のライブ良かったよー!いつにも増してカッコ良かった」
ナナは俺の隣に座りながら笑顔を見せた。
「ありがとう」
俺はナナからもらったドリンクを一気に飲み干した。
なんてゆーか、ナナは素直で可愛らしいタイプだ。
ぶっちゃけ俺の好みだし、ナナの事好きだった時もあった。
でも今は違うんだ。
ナナを前にしても何とも思わなくなっちまったし、沙織だけなんだ。あんな気持ちになるのは。
「今日の新曲だったよね?」
空になった俺のグラスを受け取りながらナナは言った。
「歌詞すごい良かったよ!あんな風に達也に想われてるコは幸せだね。きっと世界一!」
そうしてカウンターに戻って行った。