フリースタイル5-3
「あれ?kyouzは?」
たこ焼きの売り子をやりながら沙織は言った。
ああ、恭介なら校門の前で女子高生をナンパしてそのままどっか行ったよ。
なんて言えず、
「さぁ、はぐれたかな」
と適当に俺は返した。
恭介の女にだらしない性格を沙織がどこまで知ってるのか俺は知らないけど、自分の文化祭に来て早々ナンパってのは気分の良い話じゃないだろう。
「そっか、じゃあ2人であたしのクラス行こうよ」
「お前、売り子は?」
「ああ、いいの。手伝ってただけだから。本当はうちのクラスの出し物は書道展だから」
「書道展!?」
似あわねぇ…。
そう思ったのは俺だけじゃないだろう。
恭介が今ここにいたら突っ込まれまくりだぞ。
ほかの教室には行列を作るほどお客さんがいるのに、沙織の教室には隅の方で腰を下ろしたおじいさんしかいなかった。
「コレコレ!あたしが書いたの」
見ると¨純愛一途¨と堂々と書かれた紙をさして沙織は言った。
おいおい、純愛ってガラか?
しかも意外と達筆じゃねぇか。
「ちょっとぉ!何黙ってんのよ」
いやいや、誰でも唖然としますよ。
「………お前ロマンチストなんだな」
やっと出た言葉がコレ。
言って自分で恥ずかしくなった。
ロマンチストって…俺は何年か前のキザ野郎か!!
当然沙織にも笑われると思ったが、横を見ると沙織は照れくさそうにしていた。
「ありがとう」
――ああ、そうだな。人から見たら別に大した事ない。
でもな、俺はな、そんな沙織に猛烈にキューンとしたんだ。
「こんな恋愛したいんだ」
沙織は"純愛一途"の言葉を見ながら言った。
そんな恋愛を俺としてほしいと思った。
その時からだ。俺は沙織の事が可愛く見えてしょうがなくなった。