侵蝕-2
きっと、彼を捕まえているのは、私の方なのだ。
私がここにいるせいで、彼は苦しんでいると思う。
でも、私はここから離れない。ずっと、ここにいる。
泣きながら私の顔に触れ、謝り続ける彼の肩を撫でる。
謝るのは私の方なのに。
ここにいて、ごめんね。
傷つけて、ごめんね。
心の中で呟いてみても、その言葉には現実味がない。
私の中では、彼の映像がずっと流れているから。
私をめちゃくちゃに刺して、血だらけの部屋で私の死体に謝り続ける彼の姿。
異臭漂う室内。
私は死んだ。
彼が殺した。
その光景が、私の中で日々鮮やかになる。
いつかそんな日が来ることを、想像している。
---でもその時自分が少しだけ笑っていることに、私は気付いていない。
私は、彼の哀しく怯えた瞳を見る。
ごめんね。
私は声を出さずに呟いた。