フニと僕の成長記4-1
僕は犬を飼っています。
いつも眠そうでおバカな真っ白い雑種。
名前は『フニ』と言います。
フニはおバカなだけじゃなくとっても『ビビり』です。
例えば…。
寒い寒い冬の朝でした。
外には雪が積もっています。
「さ、フニ。お散歩に行こっか」
いつものごとく反応はありません。
フニは寒いのが嫌いです。あの童謡の様に、フニは喜び庭駆け回りません。
ご飯を食べるとき以外、常にフニはコタツの中にいます。
フニはコタツで丸くなるのです。
犬の体温は人間より遥かに高いのですが、確実に僕よりコタツにいる時間は長いです。不健康です。
「フニ見ぃ〜っけ!」
コタツ布団の下から尻尾がチョロンとはみ出ています。
僕は布団を捲り上げました。
案の定、そこでフニは真ん丸になって眠っていました。
「お散歩」
僕がもう一度言うと、フニは片目を薄く開けて
『やだ。さむ〜い、いきたくな〜い』
とでも言いたげに僕を見ています。
そんなフニの体をがしっと掴んでズルズルと引っ張り出しました。
丸かったフニは引っ張られてビロ〜ンと伸び、毛もモサモサと逆立ってどっちが頭か分かりません。
『う〜さむいよー』
ほふく前進でコタツ内に戻ろうとするフニを抱き上げて、強制的に玄関へ連れて行きました。
イヤイヤをするフニに無理矢理リードを付けて、僕は抱っこしたまま外へ連れ出します。
恐ろしい程のダラケぶりです。
でも、白い雪の中に下ろすとやはり
『ッラァ〜〜!!』
テンション急上昇です。
足元の悪い中ぴょんぴょんと飛び跳ねながら雪と戯れています。なのであまり前進はしませんが、それでも僕たちのお散歩はゆっくりゆっくり進んでいきました。
そして、お散歩も終わりに差し掛かった頃です。
向こうの空からV字を描いて白鳥の群れが飛んでくるのが見えました。
V字は一つではなく、幾つか一緒になって飛んできましす。
そしてあっという間に、僕らの頭上に…。
【…クゥ、クゥ、クゥ、クゥ!】
白鳥の鳴き声は意外と高くて大きく、透明感のある声はトランペットのように耳を突きます。
そして白鳥は翼を広げると2メートルもあり、空高く飛んでいたとしてもその大きさははっきりと分かりました。
「フニ、白鳥って綺麗だよ…ね…」
僕がフニに目を向けた時、フニは空を仰いだまま固まっていました。
腰が引けて後ろ足の間にすっぽりと尻尾が収まっています。