電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿 ―桜編―-9
春だなぁと桜が散っていくのを見ると毎年思う。
「あの桜はどうなったのですか?」
「〔意志〕の流れが工事でおかしくなっちゃったからさ。じぃさまがうまく直して、別の場所に移されたみたい」
「伐られずにすんでよかったですねー。せっかくです、お花見しながらミルクティが飲みたいですよー」
「美由貴もお花見したぁい☆」
「ああはいはい。神社の境内で花見したのバレたらあんたたちのせいだからよろしく」
言いつつ、ブルーシートにお昼ご飯を弁当箱に詰め、紅茶をポットに入れて、小林家だけが独占出来る絶好の花見スポットに向かう。
両親が生きてた頃は毎年していたけど。いつからか、両親を思い出すようなことは避けてた気がする。
いい加減、そんな弱さから卒業しないといけない。桜は毎年、咲くのだから。
「真琴真琴」
「ん?」
「桜、綺麗だね」
「うん……綺麗だね」
少し強く、風が吹いた。
花びらが散る様子は儚くて、だからこそ僅かな楽しい時間を大切にしたい。
いつかは、誰にでも。楽しい時間も辛い時間も終わって、だけどまた始まる。毎年咲いては散る、桜のように。