僕らの関係 残るヌクモリ。-33
「幸恵、上手だな……」
二度目だからだろうか? それともシミュレーションに余念がなかったからか、とにかく恵を喜ばせたと自負する幸太は、さらにイタズラの頻度を高める。
「ん、ああ……おい、調子に……乗る……ああん! や、ダメ……」
男装をしているはずが、徐々に声が上擦り、嬌声へと変化する。
ソファの上でもみ合う二人だったが、身をくねらせる恵は刺激から逃れようとするうちに幸太に組み伏される格好になる。
「恵……」
「コウ……太?」
完全に上下が逆になると、そのまま手首をひね上げられ、身動きを封じられる。
幸太は少し眉をひそませ、悲しそうな目で彼女を見下ろす。
「おい、コウ……今は幸恵だろ……そんな怖い顔するなよ」
「恵……僕、やっぱりヤダ」
「あたしとやるの、嫌か?」
「違うの。僕、幸太で恵のこと抱きたい」
真摯な眼差しに対し、恵は目を背けることしか出来ない。
偽りの性で愛し合う。その違和感に耐えられなくなった幸太。彼は恵の首筋に唇を這わせ、すがりつくような愛撫を繰り返す。
乾いた唇と唾液の絡んだ舌。くすぐったさとねっとりと熱いものを交互に感じると、恵の口からは熱いと息が漏れる。
「ん、だって、そういうの……ダメなんだ……」
「僕、恵のことも好きなんだ……」
「好き……か。ふふ……あたしも幸太のこと好きだよ」
「じゃあ……」
彼の右手が豊満な山をぎゅっと掴む。左手はひき締まったわき腹を弄り、たまにオヘソを刺激する。
「しゃーない。コウにあげるか……それに、ここまで来たらあたしだっておさまりつかないし……けど、コウ? 気持ちよくしてくれないと怒るからね?」
「恵のこと好きだから、僕がんばるよ……」
不適なエミを浮かべる恵に、幸太はいじけた顔をぱっと明るくさせる。
「現金な奴。てか、浮気して大丈夫か? 由香、ああ見えて結構根に持つタイプだぞ?」
確かにひっかかる気持ちもなくは無い。しかし、目の前で顔を赤らめる彼女から香る、アルコールとも違う匂いの前に、幸太は他のことを考えるのをやめている。
「今は恵と僕だけ……」
テーブルの上に転がしていた箱を手繰り寄せ、包みを取り出す。被せる前に一度彼女の口腔内でやんちゃをしてみたい欲望もあるが、それよりも自身を受け入れてもらいたい気持ちが強い。
そして、ついこないだ知った女の味、恵の味も知りたい自分がいる。