僕らの関係 残るヌクモリ。-2
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中学を卒業してからも由香は幸太の家によく訪れていた。彼の両親がいないときなどには四人集まって夕食をともにするからだ。ただし、彼の部屋に入ることほとんどない。
久しぶりに訪れた彼の部屋は、昔見たときと同じで簡素だった。
青いカバーが敷かれたベッドの枕元には、「簡単レシピ百選」と題された雑誌が無造作に置かれ、冷たいフローリングの床に短めの髪の毛が落ちている程度。机にはノートと辞書が数冊あり、いつもここで勉強と、別のことをしているのだろう。
去年の冬は勉強合宿の合間にささやかなクリスマスパーティをした。ただ、里奈があまりにも豪勢なケーキを買ってしまったため、七面鳥の予算が足りなくなり、安かった鱈で鍋を囲むことになった。そのあとは受験シーズンにもかかわらず、トランプをしていた。
ムードの無いクリスマス会だったが、友達の域を出ない彼女達にはそれで充分だった。
――今年は幸太ちゃんと二人きりで……。
吹けば消えてしまいそうなキャンドルライトの下、幸太の優しい瞳が自分にだけ向けられる。ケーキのような甘いものは必要ない。彼に身体を差し出し、代わりに特別を受け取るのだから。
「由香ちゃん? どうしたの」
妄想に酔いしれる彼女を幸太のとぼけた声が現実に戻す。
「なんでもないの……それより、幸太ちゃん、どうしてほしい?」
不埒な想像を誤魔化そうと、由香はベッドに座る幸太の前に跪き、膝の皿を指でなぞる。
「えっとさ、僕が寝て、由香ちゃんに上に乗ってほしい」
「なんだ、そんなので良かったの……」
彼の希望は思ったよりもささやかだ。幸太の部屋という二人きりの空間。誘われたとはいえ、それについてきたのは自分であり、強制されたわけでもない。
――もし強引に求められたらどうしよう?
そんな不安もよぎるが彼は幸太。気の弱い彼に、一回り大きな自分を押し倒すことなど出来るはずが無い。そう考えた。
「ね、いいでしょ?」
「うん、いいよ。それじゃあ、横になって、楽にして……」
幸太は横になり、ベルトだけ外す。由香は彼のすねの辺りに跨ると、通気性の良さそうなボクサーパンツの膨らみに手をかける。
先端が少し滲んでおり、これから始まる恍惚の時間への期待感をうかがわせていた。
「もう、幸太ちゃんは節操が無いわね……」
「だって、由香が最近焦らしてばっかりなんだもん」
――由香?
彼が自分を呼び捨てにしていることに違和感を覚える。
――焦らしすぎたから怒ってるの?
だとしても、それは彼が自分に恋焦がれている証拠。そう解釈すれば彼のちょっとした生意気な素振りも許せる。
「あ……由香ちゃん、ごめんね、無理ばっかり言って……。女の子じゃないから、そういう大変さがわからないんだよね」
「うん? うん……そうだけど……、幸太ちゃん?」
「ゴメンネ、由香ちゃん」
暖かい手が触れると喉元に絡みつくような疑念も薄れてしまう。