僕らの関係 残るヌクモリ。-11
「そんなたいしたことじゃないよ。ちょっと抱きしめてあげたらいつもとおんなじ。
幸太ちゃんは単純だから」
『そう? 里奈はてっきりコータに自信をつけさせてあげたのかと思ってるけど?』
「なによ。自信って……」
『男の子なコータが男になるのってさ、自信に繋がらない?』
「男って、幸太ちゃんにはまだ早いわ」
『でもさ、最近、コータ、かっこよくなったと思わない?』
文化祭での幸太の役回りは基本的に表方に徹していた。前に立つことを嫌う自分の代わりにたどたどしいながらもプレゼンを行い、クラスメートへ指示をこなした。
それは確かに格好よかった。
「うん。かもね……」
『あれってユカリンの仕業だと思ってたけどな……』
もしかしたら放課後のフェラチオが彼の中の男を刺激したとのだろうか。だとしたら、彼を勇気付けたのは、確かに自分になる。
『で? それだけ?』
「うん。ちょっと気になってさ」
『ふ〜ん……そ』
そっけなく言う里奈はもう飽きているのかもしれない。通話時間を見ると既に十分が経過しており、通話料が百三十円と出ている。
「ゴメンね、変なことで電話して……」
聞きたいことを聞き出すことが出来なかったものの、里奈は幸太の変身ぶりを学園祭と見ていた。それなら原因は自分であり、今日の彼の乱暴も、初セックスを焦るあまりの暴挙と甘えだと考えれば納得できる。
『んーん。平気だよ』
「それじゃあまたね?」
『うん……あ、そうだ』
「なに?」
『里奈はユカリンの友達だよ? だけど、由香には負けたくないからね』
「なにそれ? 変な里奈」
『うふふ、それじゃーねー』
里奈は言いたいことを言い終えたのかぷっつりと切ってしまう。
一体なんの勝負だろう? そして、何故、里奈まで自分を呼び捨てにするのだろう?
――考えすぎだよね、きっと……。
午後七時を回ったと携帯が告げる。由香は携帯をたたむと、夕飯の準備をすべく、台所に向かった。