未完成恋愛シンドローム - Crazy Children --6
「ん・・」
「お」「あ」
やっとカイトが起きた。
「おはよ」
「ん・・・」
寝ぼけ眼で目を擦る。
「夢見た・・」
「夢?」
―あの一瞬で?
思いつつ、取り敢えず次の言葉を待つ。
「うん」
まだ眠そうにしながら、カイトが続ける。
「ETに頭からビニール袋被せられて」
『・・・』
「どんどん苦しくなって、気付いたら川の傍に立ってて」
『・・・・』
「向こう側の花畑でトラッキーが手ぇ振ってて」
『・・・・・』
「ミッキーマウスに往復ビンタされて目ぇ覚めた」
『・・・・・・』
―なんでしょうか、この呉越同舟な感じの夢は。
―と言うかむしろ三途の川見えてるし。
―っつーか大冒険?
色んな思いが頭を巡るものの、下手なことを言うとやぶ蛇になりそうな気もしなくはないので黙っておく。
と、
「あ」「やべ」
本鈴が鳴り始めた。
「お前ら、次美術やろ?」
言いながら後ろを振り返る。
そう言えば、いつの間に戻ったのかもう既に和葉達の姿はない。
―アイツら・・。
が、今怒ったって仕方がない。
「急げ」
「うん」「んー」
割と焦ったゆーしの声と、何故か嫌そうなカイトの声が被る。
「後5分あるんちゃうん」
―ああ。
今のを予鈴だと思ってんのかもしかして。
「今の、始まるチャイムやボケ」
「・・マジ?」
ようやく状況を察したのか、カイトが飛び起きる。
「早よ行け」
「ん」
そのまま駆け出して行く2人。
と、
―カチャン
カイトのポケットから何かが落ちた。
が、立ち止まる様子はなく、そのまま走っていく。
「?」
近くまで寄っていく。
「・・あのアホ」
ケータイだった。
慌ててそれを拾い、辺りを見回す。
「・・・・」
既に2人の姿はない。
「やべ」
向こうから、次の教科の担任が来るのが見えたので、取り敢えずケータイはポケットに入れて教室の中に入った。
・・・・・。
5限目の授業が終わると、すぐに席を立った。
「どしたん?」
声のした方を見ると、コタローが居た。
「・・・」
―つかこいつ、こないだのこと忘れてんのか?
もうしないから今回だけは許して、的なことを言ってた気はするけど・・。
考えてみれば、こいつがあんなバカなことをしなけりゃ、・・・。
「・・・・」
「?顔になんか付いてる?」
いつも通りのコタローの態度。
「いや」
視線を逸らし、
「なんでもない」
首を掻く。
「いくら俺がイケメンやからって」
「・・・・」
なんか、物凄い聞き覚えのない言葉が聞こえた気がする。
「惚れたらあかんでー」
「死ね」
あんまりと言えばあんまりな発言に、軽く殺意さえ混ぜた一言を言い捨てる。