未完成恋愛シンドローム - Crazy Children --4
「なるほどねー」
言いながら、和葉が笑う。
確かに、時間一杯まで走り続けたんやったら、端数くらいは出るしな。
「つーかカイト、早弁した後にそんだけ走って、よー吐かんかったな」
コタローが聞く。
まぁ、確かに。
「えー、だって」
その会話を聞きながら、オレは残っているペットボトルを口に運ぶ。
「せっかくの弁当、無駄にはでけへんやん?」
手が止まった。
「実は途中何回か上がって来ててんけどなー」
にししと笑いながらカイトが言う。
「出したくないから飲みこんだ」
「かーくん汚い・・・」
「よーちゃん、ひどっ」
そんなバカ話を耳に入れながら、オレは思った。
ああ、こいつも、母さんのことが大好きなんだ、と。
・・・・・・。
予鈴が鳴った。
「そろそろ行く?」
立ち上がりながら和葉が言う。
「ん」「せやね」
コタローとゆーしが相槌を打ち、立ち上がって尻を払う。
「ほら、カイト起きろ」
いつの間にか寝転がって寝ていたカイトの肩を掴み、揺すって起こす。
「んー・・・」
もぞもぞと身じろぎをするカイト。
「こーしてれば」
「ん?」
いつの間にか横に立っていたゆーしが、カイトの顔を覗き込んでいた。
「可愛いい顔してんのになー、こいつも」
その言葉に、改めてカイトの顔を見てみる。
目鼻立ちの整った顔は、ともすれば女の子みたいにも見える。
・・・。
っていうか、こいつの顔オレとおんなじだし。
「気持ち悪いこと言ってんと、早よ行くで」
「んだねー」
ケラケラ笑いながら、ゆーしがカイトを揺する。
「くー・・・・」
「・・・」「・・・」
爆睡。
「次の授業は?」
「美術」
部屋移動か。
となれば、無理をしてでも起こしてやらなきゃ、カイトだけじゃなくゆーしまで遅刻する。
「ゆーし」
「ん?」
さっきから指でカイトの顔を突っついていたゆーしが、顔を向けてくる。
「取り敢えず、先に戻ったら?」
「んー」
「起きひんかも知れんし」
「大丈夫」
「?」
いや、こいつこうなったら滅多なことじゃ起きな・・・。
「最悪、担いででも連れてくし」
「・・・・」
まったく、このアホ共は・・・。
「しゃーない」
こうなれば最終手段。
「どいて、ゆーし」
「ん?」
ゆーしが横に避けたのを眼で確認しつつ、手をカイトの顔に近付けて行く。
因みに、さっきから和葉とコタローは、こっちの騒ぎにも目をくれず、2人して喋っている。