未完成恋愛シンドローム - Crazy Children --22
「・・?」
周りが、白かった。
比喩でもなんでもなく、なにもない。
視線を動かして辺りを見回しても、果てしなく続く地平線に似た世界が広がっている。
ただ、オレのことを抱いている人が座っている椅子があるだけ。
―人?
視界が開けた今なら誰か判るかもと思って、顔を見上げた。
「誰?」
声を掛ける
返事はない。
―誰なんだろう。
と、気付いた。
「あ・・・・」
彼(?)には、顔が無かった。
・・・・・。
「ん・・・」
目を開けた。
―あれ?
見慣れた帰り道。
歩いてるワケじゃ無いのに、景色が流れて行く。
―夢か・・・ん?
よくよく自分の身体を見てみると、いつの間に着たのか、登校の時と同じ格好をしていた。
―いや、同じちゃうな。
朝には着て無かったカーディガンを、Yシャツの上に着ていた。
―つか、これってオレのちゃうやん、
「起きた?」
声が聞こえて、前を見る。
「コタロー?」
「ちゃんと着替えやってゆーたやん」
景色は流れ続けている。
「あ」
「?どしたん?」
やっと気付いた。
「あんた、ここまでおんぶして来たん?」
どうりで景色が流れていってると思った・・・。
「まーな」
足取りを止めず、答えるコタロー。
「このカーディガン、あんたの?」
「あんな格好であんなトコで寝てて、下手すりゃ風邪引くしな」
―つまりはこいつが着替えさしてくれたってことか・・
「コタロー」
「ん?」
「腰痛い」
考えてみれば、あんだけ疲れたのもこいつとヤってたからで・・。
まぁ、誰が誘ったとかはこの際考えない方向で。
「歩けへん」
「はいはい。家までは行くよ」
方向真逆の筈なのに。
律儀なヤツ。
「コタロー」
「なに?」
「もし、オレがあんなこと言わんかったら、手ぇ出さへんかった?」
なんとなく聞いてみたかった。
「せやなー」
少し、コタローが笑った気がした。
「絶交はされたなかったし」
「・・・・」
ほんと、律儀なんだかなんなんだか・・。
「ただ」
「あ?」
どうやら話はまだ続いてたらしい。
「和葉ちゃんには悪かったけど」
「は?」
―和葉が今の話になんの関係が・・・?
「・・激ニブ」
「なんか言った?」
「なんでも」
「?」
意味が判らん・・。
「重くない?」
「いや、全然軽い」
―それはそれで、どうなん・・?
つか、さっきからオレばっか話かけてる気が・・。