ラブベイビー-頑--2
「食べたいと思った時に食べれるもの食べないと、赤ちゃんに栄養行かないの。
ツワリって本当大変なんだかんね」
ツワリツワリって偉そうに。確かに重い人って生むまで辛いって、こないだ買った本に書いてあったよ。
でもお前の場合ツワリとは無縁だろ。
とりあえず6ヶ月目で妊娠発覚だからな。一般的に辛い時期とっくに過ぎてっかんな。
しかも、下手したらいまだに気付いてなかったかもしれないっていうね。
「赤ちゃん、スイカはいらないって。麻婆茄子食べたから」
ふっ、言ってやった!
「あんたの分際で"ちゃん"だなんて厚かましい!アタシの赤ちゃんだよ?あんたは赤さんと呼べ!」
ぇえ〜そこ〜?赤さんなんて聞いたことないのに…。
俺の子なのに胎内の中にいるうちから、俺は子供にさん付け…。
お前と話してると目眩もプラスされてくるわ。
「てかスイカ」
お前は旦那の体よりスイカの方が大切なんですか。
ま、今に始まったことじゃねぇか。
「悪い。無理。俺、寝るわ」
「えっ、なっ…ちょ!」
もう付き合ってらんねぇよ。
ところでちょって何だ。最後まで言え、アホ。
アホアホアホ!
あぁ、一人で寝る布団て久々だなぁ。
なんて考えていたらキィと寝室のドアが開いた。
スッスッとフローリングに裾が擦れる音がする。近付いてくる気配。
完全に幽霊の登場シーンだな。
寝たフリしよ。
そっと俺の額にひんやりした手が添えられた。
「…ホントだったんだ」
お前は冗談だと思ってたのか?
「起きてる?」
寝とるわ、ボケ。
「寝ちゃったか」
一人言のようにポソポソと話している。
今度はコツンと額らしきものが押し当てられた。
「7度ちょいってとこかなぁ。微熱だけど…薬飲むかな」
飲まん。薬嫌い。
たぶん寝りゃ治るだろ。
「寝れば直るとか言いそう」
えぇ〜分かられてる!
ビビるわ、と同時になぜか安心感。
何つーか、さすがお前。
「…ごめんね」
お前、声低っ。稀にみるへこみ具合だな。許してやるか。
「うん、いいよ」
俺は腕を伸ばしてゆっくり後頭部を撫でた。
お前はいつも
よく頑張ってる。
するとお前は嬉しそうに頬をくっつけてそっと囁いた。
「…起きてんだったらさっさと薬飲め、ハゲ」
【end.】