維新-1
……………
………
…
鬨の声とともに銃声が鳴り響く。
「始まったか…」
その音から少し離れた位置にいる精悍な顔立ちの男が呟いた。
「そのようですね」
その男の隣りにいた大柄な男が答える。
「お前は行かなくていいのか?」
「私はどんな時もあなたのそばにいると決めていますから。あなたが行かないのなら私も行きませんよ」
「勝手にしろ」
精悍な顔立ちの男がフッと鼻で笑う。
「…変わられましたね」
「…何がだ?」
「あなたの性格ですよ。最近は優しすぎて少し怖いくらいです」
「そうか…」
大柄な男が微笑んでいる。
「………まだあの人のことを悔やんでいるのですか?」
その一言でこれまでの空気が一変する。
精悍な顔立ちの男は無言で立ち上がり刀を手に取った。
「あの人のことはもう何も思ってないさ。あれがあの人なりのこの世に対するけじめだったんだ。俺がとやかく言う筋合いはない」
鞘から刀身を抜き陽に当たっているそれを見る。
そして刃先を敵陣へと向けた。
「元はと言えば、奴等が悪いんだ。
何が官軍だ!
何が錦の御旗だ!
何が逆賊だ!
結局は薩長の奴等が集まって好き勝手やってるだけじゃねぇか!
そんな奴等の思い通りにさせるわけにはいかねぇんだよ!!」
ザクッ!
男は持っていた刀を地面に突き刺した。
「……島田、実は俺な…これから蝦夷へ行こうと思ってるんだ…」
「蝦夷…ですか?」
「あぁ。噂によると薩長のやり方についていけねぇ奴等がそこに続々と集まっているらしい。だから俺も生き残った奴等を集めてそこに行って薩長に一泡噴かせてやるつもりだ。
…島田、お前はどうする?」
「何言っているんですか!もちろん私もお供致しますよ!」
島田が即答する。
それを聞いて男は笑い、上着を羽織った。
「さて、そろそろ行くか」
話をしている間は気が付かなかったが、どうも結構な時間が経っていたらしい。
鳴り響いていた声や銃声もほとんどおさまっている。それだけ人数が減ったということだろうか。
「そうですね」
島田はただそれだけ答えた。
そして2人は無言で用意を済ませ、戦場に行こうとした。