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恋愛の神様
【ファンタジー 恋愛小説】

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恋愛の神様・後編-9

あたしの記憶の通りなら、この後保健室に現れるのは―――

「実果、起きた?」

ひょいっとベッドスペースを覗くのは、祐希。
顔も声も制服も、男の子の―――

「…祐、希?」
「ん?あぁ、ほらカバン」

呆けてるあたしをよそに、まとめて持って来てくれた荷物をベッドの脇に置く。

「ね、祐希…」
「何だよ」
「おっぱい、付いてる?」
「………お前生理痛で頭おかしくなった?」

この返し方も同じ。
祐希だ。
正真正銘本物の祐希…

「祐希!!」

いても立ってもいられず、ベッドから身を乗り出して抱き付いた。
真っ平らな胸、ちょっと汗臭いのも男の子だから。

「祐希ぃいぃ…」
「何だ、どうした!?」
「大好き」
「は!?」
「祐希大好き」
「おい、実果!!とりあえず離れろって、学校じゃまずい――」
「やだぁっ、絶対離れない!祐希大好きだもんっっっ」
「分かったから!!いいから離れろ!」

引きはがそうとする祐希に力一杯しがみついた。
もう離さない。
絶対大切にする。
あたしが幸せにしてあげる。
それでいいんだよね?恋愛の神様―――





経血も生理痛も和らいだ翌朝。

「おはよ」

校門で待っていたのは男の子の祐希。
笑顔と一緒に安堵の息が漏れた。

「…おはよ」
「どーした?まだ調子悪い?」
「ううん、平気」

昨日家に帰ってからまずカバンの中身を床に広げた。教科書や筆記用具に混じって飛び出して来たのは"貼るホッカイロ"。
直接渡してくれたらいいのに、こんなやり方して…

『…ふっ』

これをカバンに入れてる祐希を想像したら、何だか笑えた。
それからアルバムやプリクラ、携帯のメモリのチェック。
あたしの横には男の子の祐希が当たり前に写ってる。それでもこうして本物の祐希を見るまでは不安だった。
また夢を見てるのかもしれないから。


昨日目が覚めるまでに起こった出来事を祐希に話すと、

『授業サボってなんて夢見やがる!!!!』

呆れて怒って、笑ってた。

夢。

祐希の言う通り、全てが夢だったと言えばそれで片付く。でもどうしてもあれが夢だったとは思えない。
見るモノ、触るモノ、感じるモノ、それら全てにリアリティがあって、でも今日は今日で―――

時間を戻したみたい。
二度目の昨日、二度目の今日。
足下がおぼつかないふわふわした気分は、夢と現実の区別がついてないせいだろうか。


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