恋愛の神様・後編-7
「ゆう…?」
「メール見てないの?」
「見たよ」
「じゃあ何で?あたし今フラれてきたんだよ?」
「だから文句言いに行くの!考え直せって―」
「…わけ分かんない。あんたは素直に喜べばいいじゃん!これで八代は実果のモノになるかもしれないのに」
「いらん!あんな奴!!」
「いらんって…、あんたねぇ、自分の好きな人を――」
「好きじゃないの!」
「…え?」
「あたし八代なんか好きじゃないの!」
「えぇ?」
「あたしは―」
言いかけたあたしの腕を、祐希が振り払った。
「祐希…」
「何でそんな嘘ついたの!?」
「ごめん」
「そしたらあたし告白なんかしなかったのに!ずっと友達でいたかったのに!!」
「ごめん」
「ひどいよ…」
きっと泣きやんだばかりだったのに、祐希の目からは涙が溢れ落ちた。
あたしが泣かせた。
あたしが傷付けた。
大好きな人なのに、いつも笑っていてほしいのに、あたしが―――
次の瞬間、衝動的に祐希を抱き締めていた。
「実果!?やめ…っ」
「祐希を取られたくなかったの!」
最低な言い訳を叫んで。
「八代と祐希が付き合ったら祐希はあたしなんか忘れちゃうと思った。だから―」
いつの間にかあたしも泣いていた。でも止まらない。
「あたし、祐希の事何にも分かってなかったの。いつも優しかったのに気付きもしなくて文句ばっか言ってて、」
喋り続けるあたしとは対称的に、祐希はずっと黙ってる。
怒ってるのかな。
呆れてるのかな。
両方かな。
いいよ、それでも。話を聞いてくれるだけで十分。
あたし、もう決めたの。
それはね、
「祐希に幸せになってほしい」
例え、相手があたしじゃなくても―――
―合格―
「…ん?」
突然、頭の中に声が響いた。
何だろう、聞き覚えのある、不吉な…
「あっ!!」
思い出して顔をあげた。
そうだ、保健室で聞いたあの声…
「…祐希?」
目の前の祐希の様子がおかしい。
動いてない。
いや、祐希だけじゃない。
通りを走る自転車も、鳥の羽ばたきも飛行機雲の白い線も全部が一時停止されたように微動だにしない。
動いてるのはあたしと、あと一つ。
頭の中の声。
もしかして、これ――