恋愛の神様・後編-5
次の日、あたしは学校を休んだ。
どんなに生理痛がひどくても祐希に会いたくて無理して通った日々が嘘みたい。
祐希の顔を見たくないなんて初めてだ。
一応制服は着たけどそれ以上行動する気力が湧かなくて、床に座り込んだまま時間が過ぎるのを待った。
熱があるわけではないのにひどく頭がぼーっとしている。
祐希、告白したかな。
八代は、何て返事するのかな…
あたしは祐希の友達。もう恋人じゃない。
あたしの事なんてもう―――
『大丈夫かぁ?』
一瞬、出会ったばかりの祐希の声が聞こえた気がした。
祐希が、あたしを見て笑ってる…
「…そうだ、あたし階段から落ちたんだー…」
ある日、あたしは階段を踏み外した。
音を立てて派手に滑り落ちた失態が恥ずかしくて、下を向いてぶちまけた荷物を慌てて拾っていると、
『あはははは!!』
無神経な笑い声がその場に響いた。
顔を上げるとそこには子供みたいな男子があたしを指差してばか笑いしてる。
『いいコケっぷり』
ニヤニヤするそいつを睨み付けて、その日はそれで終わった。
第一印象が最悪だと簡単には忘れられないらしい。
一瞬しか見てないそいつの姿形はくっきりはっきり覚えていた。
それ以来、廊下ですれ違う度にそいつはあたしを見て笑い、あたしは露骨に顔を背けた。
そんな毎日が続くと嫌でもそいつの情報が増えていく。
横を通る時に気付いた背の低さ、祐希という名前、笑顔の可愛らしさ、いつの間にか名前で呼ばれていた事、呼んでいた事。
好きになっていた事―――
『♪♪♪♪』
「!!!!」
突如鳴り響いたメール着信音に肩が大きく上下した。
丁度下校時間。
絶対祐希からのメールだ。
携帯、どこに置いたっけ?今日一回も見てない…
制服のポケットにもない、カバンは――
逆さまにして中身を全部出すと、教科書や筆記用具と一緒に携帯が飛び出した。
もう一つ、見慣れない物と共に。
そんな物よりメール…っ
『八代にフラれちゃったよ。次は実果の番だね』
「………」
短い、切ないメールだった。
あたしはやっぱり最低だ。
心のどこかでホッとしている。
祐希が今泣いてるかもしれないのに。
こんな時なんて返信したらいいんだ。
"残念だったね"とか?
"元気出して"とか?
ダメだ。
あたしは八代を好きだって設定。どう言葉をかけても、全部嫌味になる。