愛しい君に、誓いのキスを-1
世界が前後に揺れている。
「起きろ!朔!」
うつらうつらと、窓際でうたた寝をしていたはずなんだけど。
何故か、弥勒が、僕の肩を、がっしりと掴んで、ガクガクと、揺らしていた。
首が、身体の前後運動についていけなくて、はずれそうだ。
「弥勒、落ち着け、首、はずれる」
「…あ、わりーわりー! だって、さっきから、夕ちゃんと、朔の話題で持ちきりだぜ?」
「あー、そう」
「やっぱり、付き合ってたんだな〜いや、みんなびっくりしてたぞ?」
「なんか、お前は、そんな風でもないように見えるけど」
「ん?だって、俺は朔の親友、だからな!」
へへっと、得意げな弥勒。
「夕ちゃんといるときの朔、みてたらわかるよ。だって、すげー優しい、穏やかな顔してるし」
「あ、でも、いつも一緒にいる、俺だからわかるんだけどな」
ーでも、朔が、自分から動くとは、思わなかったけど。無自覚だっただろ?と、弥勒。
…なにげに、親友を名乗っているわけでもないらしい。
「で?」
「何?」
「みんなに、なんて言ったんだ?和とかは、地震が起きるから帰る、とか言ってたし」
「たいしたこと、言ってないけど」
ただ、いつもの恒例の、男の、妄想話だ。
たしか、肝試しに一緒に行くなら、誰がいいかって話。
だいたい、僕は乗り遅れるし、別に乗る気もなく、聞き流していた。
でも。
『俺は、夕ちゃん行きたい!』
『きっと、きゃっとか言って、抱きついてきちゃったりして!』
『宥めながら、あわよくば、チューしてぇ!』
そんな会話が聞こえてきたものだから。
「だめ」
『…へ?朔?』
『何がだめなんだ?あ、朔は誰と行きたい?』
「夕は、俺の」
「だからチューも、抱きつくのも禁止」
僕は、そう言って、さーっと輪から抜け出したのだった。
「…そら、みんなひっくりかえるほど、びっくりしただろうよ」
「そうか?たいしたこと、言ってないけど」
「朔。それを世間一般でなんて言うか、知ってるか?
嫉妬!すなわち、そう!ジェラシー!」
「…もう、帰っていいぞ」
まだ、弥勒は何かを、言っていたけれど、僕は無視して、さっさと帰った。