僕らの関係 学園祭-3
「どーだ。まいったかー」
一体何をまいるというのかはさておき、里奈も味見に一つ摘む。
「んっふふー、やっぱり里奈はお菓子の天才、パティシェ……だ、も……ん」
緩み無い笑顔がやや引きつる。一体何事かと訝る由香は、幸太と里奈を交互に見比べ、首をかしげる。
「んーと、えっと……、里奈ね、もうちょっち研究するから、みんなは待っててね」
里奈は包みを乱暴に掴むと、冷や汗混じりのぎこちない笑顔を浮かべて教室を出る。
「何? あれ……」
由香は友人の奇行に腕を組んで頭を捻る。
「さあ? 悪いもんでも食べたんじゃないの」
恵も訳がわからないと手の平を上げてお手上げを示す。
ただ一人、真相を知る幸太は、乾く喉をお茶で潤していた。
***―――***
「だいたい……、みんなアンケート、あぅ……答えてくれたよ……」
「そう? それで、一番多かったのは?」
「えと……や、痛い……んぁ……、えと、漫画喫茶と仮装喫茶が十票ずつ、それと……あ、だめ、そんなにされたら……」
「続けないとダメ……」
人気のない教室、放課後の打ち合わせ。しかし、片一方の男子は陰茎を露出させ、もう一人の女子にそれを弄られている。
左手で付け根を掴み、右手はさっきから亀頭を指で弾く。その度に男子は悲鳴をあげ、集計結果を落としそうになる。
「どうしてそんな……痛いことするの?」
「だって、ムカつくんだもん。今日の幸太ちゃん……」
「僕、悪いことした?」
「した!」
日中のことを思い出すも、何も思い当たることは無い? いや、一つあるが、それは由香の思うほど甘い出来事ではなく、むしろ……。
「なにさ、そんなに里奈のクッキーがおいしかった?」
「そんなこと……」
「すっかり鼻の下に伸ばしてさて……。幸太ちゃん、里奈が好きなんでしょ」
嫉妬する彼女は半眼で彼の陰茎を睨みつつ、それでも頬を朱に染めている。
「だって、僕は味見……」
「私はもらってないよ? 同じ実行委員なのに! きっと里奈は幸太ちゃんを自慢のお菓子で釣ろうとしてるの……あームカツク!」
指で弾かれる度に身体の芯に響く傷みが生まれる。それでも間抜けな亀はその口から涎を垂らしている。
もしかしたら自分はマゾなのかもしれない。
何度目かの刺激のとき、かすかに歓びを覚えた自分がいたことを、彼は冷静に受け止めていた。