僕らの関係 学園祭-27
「だって、里奈、処女膜っていうのあるんでしょ? それってエッチすると破けるんでしょ? 血が出るでしょ、痛いんでしょ?」
「血がでるなんてちょっぴりだよ。それにお料理してたら手だって切るでしょ?」
「僕が傷つけていいの? 本当にいいの? 僕ばっかり気持ちよくなって……」
「違うよ。そうじゃないの」
「だって、だって……」
なおも食い下がる幸太の頬を里奈の平手が打ち、パチンと小気味の良い音を立てる。
「聞きなさい、幸太!」
「は、はい」
何時になく真剣な表情の里奈に、幸太は思わず畏まる。
「女の子の最初が痛いのはしょうがないの。大切っていうけど、本当は痛いのに臆病なの。だけど、だからこそ頼れる人と乗り越えたいもん」
「それが僕でいいの? 僕、いつも里奈や皆に……僕、頼りないよ?」
「あれはスキンシップなの。イジメテなんかないもん」
にひひと笑う様子はいつもの彼女に、自分の中にある不安のようなものをぶっとばすべきと、幸太は唇を突き出してオデコとオデコをコツンとぶつける。
「もう、調子いいんだから」
「にひひ。里奈は元気な子だもん! ……んでもね、幸太は勘違いしてるよ。私も恵も由香、幸太に甘えてると思う。本当はすっごく幸太のこと、頼りにしてるんだよ」
お弁当を催促する恵はともかく、由香が自分に甘えているというのがわからない。
それに由香が自分に甘えているとは到底思えない。
「僕が頼られてる?」
「うふふ、幸太はまだ子供だね。そういうのわからないと、女の子に嫌われちゃうよ?」
「僕は里奈のことも好きだよ」
「それでいいよ。でも……には負けないもん」
里奈は幸太の頭を抱きしめると、耳下で何かをそっと囁く。
「ん?」
こそばゆさに鼻を鳴らす幸太。
「ん!」
里奈は唇を突き出し、キスを求める。しかし、幸太が唇を差し出すと、鼻の先にちょんと口付けるだけ。
「え?」
えくぼの出来る笑顔で幸太を笑う彼女の目には涙の筋だけが残る。
「あは!」
「もう!」
笑い出したくなる気持ちを怒ったふりで誤魔化す幸太。
「うふふ……」
「里奈ったら……」
結局は彼女にペースを握られる。可愛らしく、どこかとぼけた里奈はかなりしたたかなのかもしれない。そういえば昔からここぞという時のジャンケンでは、必ず彼女が勝利していた。