僕らの関係 学園祭-2
***―――***
学園祭の準備は滞りなく進んでいた。もともとしっかり者の由香が計画を立てており、例年の実績もしっかり帳簿に残っている為、予定を立てるのは予想したより難しいことではない。
近くの業務用スーパーにお茶とジュース、業務用たこ焼きと焼きそばを発注する。
クラスメートにホットプレートを準備してくれる人が数名いたので、汎用性を考慮して小麦粉と卵も忘れない。ちなみに、ちゃっかり里奈の希望でファッションフルーツをいくつか仕入れたりもした。明らかに予算の無駄遣いだが、そこら辺は実行委員の特権という話。
ひとまず簡易調理場を隠すための衝立を用意したが、肝心の飾り付けは喫茶の上に何がつくか不明な為、迂闊に指示を出せない。
アンケートを実施するも、有効な回答は少なく、かといってワンマンな姿勢で協力を求めることも難しい。無難に「漫画」をつけて、文字通り漫画を置くのは最終手段として、二人はもう少し案を練ることにする。
「コータ、ユカリン!」
二人が教室で頭を悩ませていると、里奈が白い包みをもってやってくる。ピンクのリボンに包まれており、ほのかに甘い香りが漂う。
「試作品出来たよ。クッキーの試作品!」
お菓子作りだけは秀でている里奈は、たまに学校にプリンやケーキを持ってくる。
それは幸太のお弁当以上の楽しみだったりする。
「へー、どれどれ……恵様が味見して……」
甘い匂いに誘われた恵が早速手を伸ばすが、里奈はその手をぺしりとはたき、包みを取り上げる。
「ダメだよー。働かざるもの食うべからず。ケイチンにはあげなーい」
「なんだよ、ケチ」
「まあまあ二人とも。でも美味しそうだね。一つもらっていい?」
「うん。一番最初はコータに味見してもらいたいな」
里奈はにっこり笑い、彼に包みを差し出す。リボンを解くと香ばしい匂いが立つ。
「いただきまーす」
彼はそのうちの一つを頬張り、頬をもごもごさせる。
「うっ……」
急に目を見開いたと思ったら胸を叩きだす。そして近くにあったペットボトルを口にするとくいと、ゴクゴクと飲み込む。
「どうしたの幸太ちゃん……まさか、美味しくなかったとか?」
「はは、おっちょこちょいの里奈だからな、おおかた塩と砂糖を間違えたんじゃないの?」
食いはぐれた恵はここぞとばかりに軽口を叩く。
「そんなことないもん! ケイチンじゃあるまいし!」
「ほー、言ったな? ならコウに聞いてみようぜ? なあコウ、美味しいのか? まずいのか?」
「う、うん……えと、里奈ちゃんのクッキーは美味しいよ」
にんまり笑顔で断言する幸太に、里奈はそれ見たことかと恵に振り返る。