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ルーツ
【女性向け 官能小説】

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ルーツU-6

私の番が回ってきた。
私が何かを話す番が。
私はありったけの感謝を彼に述べた。
シンデレラタイムの感謝を。
ずっと恐れていたことを、大人の世界に追いつけなくて
私みたいな子供の相手をしてくれてありがとう。と

はじめからずっとそうだったように
徹さんがそう思うなら、私もそれがいいんだと思う。と

涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった私に
ティシュをくれた彼も涙に濡れていた。
それで私はスッキリした。
彼の涙が何なのかは分からない。
でも 泣いてくれた。
別れに涙してくれただけでいい。と思った。

朝からどんよりしていた空も泣き出した。
ポツポツ降り出した雨に 彼は傘をさして
私の肩を抱き寄せた。
最期のキスでもするつもり?
「やめて。やさしくしないで」
私は振り向くことなく小走りに彼から去って行った。

寂しくて 寂しくて
彼と出会うまでの私は 毎日何をして過ごしていたのだろう。
しばらくは思い出せないで、ぽっかり空いた自分自身と
怯える必要のなくなった安堵感をもてあました。


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